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Business & Economic Review 2008年05月号

【REPORT】
自治体財政健全化法の関西自治体への影響試算と今後の課題

2008年04月25日 横田朝行


要約

  1. 自治体財政健全化法が2007年6月15日に成立し、2008年度決算の数値に基づき、2009年度から本格施行されることになる。同法の目的は、a.普通会計だけでなく、公営企業や公社・第三セクターなどまで監視対象を拡大すること、b.単年度フローだけでなく、ストック面にも配慮した財政状況の指標を導入すること、c.財政悪化を可能な限り早い段階で把握し、財政状態の改善に着手させること、である。

  2. 公表される財政健全性の指標は自治体全体に関わるものが四つ、公営企業に関するものが一つとなっている。具体的には、前者が実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率、後者が資金不足比率である。

  3. 関西の市町村(政令指定都市を除く203自治体)について、2005年度のデータに基づく試算を行ったところ、財政再生基準を超える自治体は、すべての指標で存在しなかった。一方、早期健全化基準については、実質赤字比率と連結実質赤字比率でわずかに上回っているものがあり、実質公債費比率と将来負担比率では基準値を大きく上回る自治体があった。

  4. 新しい判断指標によって、a.公営事業に対して必要な繰出金を行わず、普通会計を黒字にするような操作、b.公営企業や一部事務組合等が発行した地方債残高の普通会計への影響、c.地方公社、第三セクターまで含めた自治体の後年度の債務負担、が監視可能となる。ただし、早期健全化基準はかなり緩やかな値と考えられるので、基準をクリアしていても指標が比較的高い値となっている自治体は一層の財政健全化に努める必要がある。

  5. 自治体財政健全化法を活かしていくための今後の課題として、a.指標公表の仕組みを活かした、住民の自治体財政への関心や議会の監視機能の充実、c.自治体の一層の情報開示、c.補完的な指標の導入や指標算出に判断の余地が入る場合のルールの明確化、d.現実に経営が厳しい地方公営企業や地方公社、第三セクター等について、債務処理や自治体の責任の在り方の検討、が挙げられる。
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