Business & Economic Review 2008年04月号
【REPORT】
地域経済活力はどうすれば高まるか-「産業特化戦略」と「地域主体型ネットワーク」がカギ-
2008年03月25日 調査部 ビジネス戦略研究センター 研究員 小西功二
要約
- 2002年以降、わが国は長期にわたり景気回復基調にあるが、地域ごとの経済状況にはバラツキがみられる。この背景には、地域が経済グローバル化と人口減少の進行に適合した成長モデルを確立できていない現状がある。本稿では、地域経済活性化の要因を分析し、地域再生のための具体的な方策を検討した。
- 地域経済活力を左右する要因として、「人口ファクター(人口規模と人口集約度)」と「産業集積ファクター(競争優位性のある産業の集積度)」を考え、それぞれの指標の影響度を分析した。その結果、最も影響度が大きいファクターは、「競争優位性のある産業の集積度」であり、次いで、「人口集約度」、「人口規模」となる。とりわけ、「競争優位性のある産業の集積度」の影響度が突出して大きく、競争力の高い産業を域内にもつかどうかが地域再生のカギを握っているといえる。
- さらに、「競争優位性のある産業の集積度」に着目し、産業特化の度合いとの関係を調べると、両者には正の相関がある。このことは、競争優位性のある産業に域内資源を集中させ、得意分野を強化する戦略が、地域経済活性化の実効性を高めるために重要であることを示唆している。実際、このような「産業特化戦略」を実践し、成功している事例として、三重県の製造業、北海道の観光業、青森県の農業が挙げられる。
- このように、地域経済の再生には、まず各地域の地元資源を活かした産業集積の形成が必要であるが、加えて、形成された産業集積をさらに発展させ、地域全体を活性化につなげるためには、生み出された富を域内各地に均霑させることが必要である。この際、域内各地とネットワークを形成し、ヒト・モノ・カネ・情報のハブとなる「中核都市」の存在が重要になってくる。その好事例として挙げられるのが、福岡市を核とする九州経済圏である。
- 地域経済活性化に向けた取組みが効果を挙げるためには、地域の主体的な関与が必要不可欠であり、そのためには、地方分権の徹底が大前提となる。もっとも、地方分権改革は道半ばであり、これを先取りする形で地域経済の再生を目指す、「地域力再生機構(仮称)」構想の成行きが注目される。この構想がより良い形で実現するために、機構には、将来の事業の収益性、継続性を重視した再生計画の立案、政府には、a.機構を活用するための適切なインセンティブの設定、b.事業拡大に向けた環境整備、c.省庁の枠を超えた総合支援体制の構築が求められる。