Business & Economic Review 2008年03月号
【SPECIAL REPORT】
所得格差と再分配政策
2008年02月25日 神戸大学大学院経済学研究科教授 小塩隆士
要約
日本は、すでに平等な社会といいにくくなっている。すでに多くの実証分析が明らかにしているように、日本の所得格差は1980年代以降顕著な形で拡大しており、その結果、日本は多くのヨーロッパ諸国より格差が大きな社会になっている。確かに、こうした格差拡大には人口高齢化や世帯規模の縮小とった人口動態・社会的要因で説明できる部分もかなりある。しかし、そうした要因を除いたとしても所得格差は着実に拡大しており、格差拡大は政策的に深刻に受け止めるべきテーマである。さらに、最近では企業による人件費削減やグローバル化のなかで雇用の流動化・非正規化が進み、低賃金層が無視できない形で形成されつつある。こうした低賃金層は税負担こそ低いものの、年金・医療・介護など社会保障負担の所得比が相対的に高めとなっており、再分配後の所得格差はむしろ拡大している。子育て環境も、同様の理由で悪化している面がある。