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Business & Economic Review 2006年12月号

【STUDIES】
非正規雇用と所得格差

2006年11月25日 調査部 主席研究員 太田清


要約

  1. 非正規化の長期的趨勢とその原因

    雇用の非正規化には1980年代からの長期的な上昇トレンドがある。90年代後半から非正規化が加速したが、それには、日本経済の長期停滞、これまでないほどの大きな不況が影響している。不況下で需要の縮小、価格の下落に直面した企業はかなりのコスト削減を行い、その一環としても賃金コストの小さい非正規雇用の割合を高めたという様子がみられる。。

  2. 若年層の非正規化

    90年代後半からの非正規化の加速で、とくに目立ったのは若年層であり、フリーターの激増が社会問題ともなった。若年層の非正規雇用が急に増加テンポを速めたのは、企業が大きな不況、長期の停滞に直面して新規学卒の採用を大幅に減らしたからである。企業は既存の従業員の雇用を維持するために新規採用を控えた。非正規雇用が全体として増えていたにもかかわらず、その正規雇用に対する相対賃金が低下し続けたのは、この若年層が非正規雇用の市場に向かい労働供給が増えたからであると考えられる。

  3. 若年層の最近の状況

    不況が終わり、企業の新規学卒への需要は回復した(ただし、景気回復が始まってから需要が回復するまでには時間がかかった)。これに伴い、20代前半層のフリーターは減り始めた。しかし、20代後半以降の層では、フリーターからなかなか脱却できない様子もみられる。また、非正規雇用として、派遣・契約社員の増勢は続いている。。

  4. 非正規化全般の今後

    非正規化全般については、大きな不況が終わってテンポは落ちているが、もともと非正規化の長期トレンドがあること、それを招いている非正規の賃金コストの割安感がまだ根強くあることから、非正規化の趨勢は続くものとみられる(ただし、当面は景気循環的要因から正規雇用の方が増える可能性もある)。ただ、雇用形態の多様化が進み、正規・非正規の二分法では、実態を的確に把握することができなくなっていくとも考えられる。。

  5. 非正規化と所得格差、格差をめぐる新しい動き

    フリーター化などによる低収入の方での格差の拡大は一部止まったが、新たに所得の上層部での拡大の動きもみえつつある。
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