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Business & Economic Review 2008年01月号

【FORECAST】
2008年度わが国経済の展望-三つの下振れ要因で、当面は調整色が強まる展開

2007年12月25日 調査部 マクロ経済研究センター


要約

  1. わが国経済は、家計部門の低迷が続くなか、新興国・資源国向けに牽引された輸出と前向きな設備投資スタンスを背景に、企業部門主導の緩やかなペースの回復基調が持続。もっとも、2007年夏ごろから、a.サブプライム問題、b.原油など一次産品価格の高騰、c.建築基準法改正による建築着工の大幅減少、といったマイナス要因が台頭し、景気の下振れ圧力が強まりつつある状況。

  2. 前提としての海外経済を展望すると、サブプライム問題の影響を受け、世界的に景気は徐々に減速する方向。とりわけアメリカでは、家計・企業ともマインドが冷え始めており、サブプライム問題が実体経済に与えるマイナス影響は長期化の様相。もっとも、新興国・資源国では基本的に高成長が持続して、世界経済を牽引する構図が持続。わが国輸出も、新興国・資源国向けに支えられて、ペースは鈍化しながらも増勢は持続する見通し。

  3. このように外需は堅調を維持するものの、三つのマイナス要因がわが国の企業部門・家計部門を大きく下押しする見通し。

    イ)サブプライム問題に端を発した株価下落により、消費・企業マインドが悪化、成長率を押し下げ。

    ロ)原油価格上昇の大半は企業部門のコストとして吸収されるため、経常利益が2.9兆円減少。また、
    ガソリン・灯油価格の上昇を通じて家計負担は0.7兆円増加。

    ハ)建築着工の減少が、以下の3ルートを通じて景気にマイナス影響。

    a.住宅投資の大幅減少。

    b.企業の建築投資が減少。工場の着工減により、機械受注も減少する恐れ。

    c.耐久財の購入減、建設関連産業の業績悪化に伴う所得環境の悪化により、個人消費が下振れ。

  4. 2008年いっぱいは、これら3要因がわが国成長率を攪乱し、経済の成長パスをファンダメンタルズの実勢から大きく乖離して下押す公算。

    イ)2007年度下期は、住宅投資と企業の建築投資の減少を主因に、景気に調整色が強まる見込み。企業収益・雇用者報酬も前年比減少に転じる公算。この結果、2007年度の成長率は、政府・日本銀行の見通しを大きく下回る1.0%に。

    ロ)2008年度入り後は、建築着工が回復するという前提に立てば、2008年夏ごろにかけ住宅投資、企業の建築投資の増勢が強まり、成長率を押し上げる見通し。2008年度の成長率も2.0%と堅調な数値に回復。

    ハ)ただし、2008年度の堅調さは、大幅に落ち込んだ水準からの「揺り戻し」にすぎず、ポジティブに捉えるべき動きとはみなせず。建築投資のペントアップ・デマンドを除外した成長率には脆弱さが残る見込み。

    ニ)また、一次産品価格が上昇するなか、最終製品・サービスへの価格転嫁が進まないため、GDPデフレーターの下落傾向も持続する見通し。名実逆転の解消は当面見込み薄。

  5. 以上のように、わが国経済が厳しい状況に陥る可能性が高いことを踏まえれば、面は、景気下振れを意識した政策運営に重心を移すことが必要。とりわけ、建築確認の明確化・迅速が最優先課題。また、日銀も景気下振れリスクへの警戒に重心を置いた金融政策スタンスに転換すべき。

  6. 中長期的な視点で考えると、内需による景気牽引力を高めることが課題。グローバル化が進展するなか、海外景気の減速、海外株価の下落、信用不安の波及など様々なルートを通じて、外的ショックに翻弄される局面が増加。これは、将来不安によるマインド悪化、様々な分野での二極化の拡大などを背景に、わが国の内需が脆弱で、経済全体として、外的ショックに対する抵抗力が弱まる方向にあることが主因。強力な成長戦略を断行することにより、所得低迷、格差問題などを乗り越えていくことが必要。
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