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RIM 環太平洋ビジネス情報 2005年04月号Vol.5 No.17

中国の地域間格差と産業の地域間リンケージ

2005年04月01日 向山英彦


要約

  1. 中国では高成長が続く一方、地域間経済格差が拡大している。地域間格差は改革・開放政策の開始以降1985年まで縮小した後、しばらく横ばいで推移し、91年以降、拡大に転じた。格差が80年代前半に縮小したのは、改革・開放政策の開始後、請負生産方式の導入により農業生産が飛躍的に増加したことによる。その後、沿海部の対外開放が拡大するのにともない沿海部の成長が加速し、格差が拡大した。

  2. 地域の発展水準を規定するのは産業構造である。産業の構成およびその生産性の違いが成長率の違いとなる。また産業構造の観点から地域間格差を考える場合、各地域の産業が投入産出面でどのようにリンケージしているかということも重要である。沿海部ではグローバル経済とのリンケージが強まることにより急速な発展を遂げてきたが、最終需要の拡大に誘発された需要のかなりの部分が海外に流出しているものと推測される。地域間格差との関連で問題となるのは、高成長を続ける沿海部と内陸部とのリンケージがどの程度形成されているかということである。

  3. 『中国多地域間産業連関モデル』の17部門の統合表より一般機械と電子産業を取り上げ、移出・輸出面でのリンケージを検証した。その結果、a.機械産業では中間財と最終財の移出が中部沿海地区と中部地区に集中し、電子産業では中間財が中部沿海地区、最終財が南部沿海地区に集中している、b.両産業において南部沿海地区と北部沿海地区Ⅰの輸出入比率が高く、これらの地区が主に輸出生産基地となっている、c.中部沿海地区は輸出比率がさほど高くなく、国内市場向けの生産基地となっていることなどが明らかになった。

  4. 生生産波及面におけるリンケージを検証した結果、上記の二産業に共通していえることは、a.1単位の生産増加にともなう生産波及効果は東北地区と中部地区で大きく、北部沿海地区と南部沿海地区で小さい、b.他地域からの生産波及効果を最も受ける地区は中部沿海地区と中部地区である、c.西北地区は中部地区から、西南地区は南部沿海地区から生産波及効果を最も受けることである。

  5. 沿海部の成長にともなう波及効果の及ぶ範囲が中部地域までであるため、西部地域(西北地区と西南地区)の発展水準を引き上げるためには「西部大開発」を推進する必要がある。また西北地区は中部地区の生産波及効果を最も受けているため、中部地域とのリンケージを強化することも西北地域の発展に寄与する。

  6. 地域間格差の是正には、短期と長期の政策の組み合わせが求められる。短期的には、一人当たり所得の均等化を目標にし、農民の所得引き上げ、社会保障制度の整備、所得再分配機能の強化などとならんで、労働移動の促進を図る必要がある。長期的には、西部地域のインフラ整備や教育水準の向上を通じて、沿海部あるいは海外から資本移動を図ることが重要である。
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