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Business & Economic Review 2005年10月号

【FORECAST】
わが国経済を支える研究開発投資の動向

2005年09月25日 益田郁夫


要約
  1. わが国の研究開発投資は、1990年代前半には一時的に減少する局面があったものの、2000年度以降は再び増勢が強まっている。研究開発投資の増勢に着目し、研究開発投資による経済成長率押し上げ効果を測定してみると、研究開発ストックによる実質GDP押し上げ効果は高まっていることが認め られた。この推計結果をもとに経済成長率を要因分解してみると、90年以降、研究開発ストックが経済成長率に対して最大の寄与となっており、これが経済成長を牽引してきたといえる。

  2. このように、研究開発投資が経済成長率を牽引してきた背景として、わが国企業が、利益の増減にさほど左右されず、研究開発投資を着実に拡大させてきた点を指摘できる。

  3. 今後のわが国の経済成長率を、研究開発投資の伸びのケース分けをもとに試算すると、以下の通りである。
    a.研究開発投資の増加率が現状ペースで推移した場合には、経済成長率はバブル崩壊以降の平均1.3%を上回る2%弱になる。
    b.研究開発投資の増勢が80~90年度並みにまで高まるケースでは、3%弱の経済成長率に上昇する。
    c.逆に増勢が91~2003年度並みに停滞するケースでは、バブル経済崩壊以降の平均成長率をも下回る低成長になる。

  4. 上記のa.のケースでは堅調な経済成長が見込まれるが、必ずしもこのシナリオの実現が保証されているわけではない。企業が短期的な収益を重視する動きを強めれば、c.のケースのように研究開発投資が停滞する可能性も排除できない。ケースc.のように経済成長率がバブル経済崩壊以降の平均を下回る事態を回避し、より高い経済成長が可能になるb.のケースの実現を目指すためには、政策的支援を強化していくことが必要である。

  5. とりわけ、研究開発促進税制については、2005年度末で税額控除率の上乗せ措置が期限切れとなるが、インセンティブ低下につながりかねない控除率の引き下げは避けるべきである。
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