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Business & Economic Review 2005年06月号

【OPINION】
科学技術立国に向けて-第3期科学技術基本計画の目指すべき道

2005年05月25日 藤井英彦


  1. 科学技術政策に成果
    第3期科学技術基本計画の検討が本格化している。本基本計画は1996~2000年度の第1期、2001~2005年度の第2期に続くものであり、2006~2010年度の5年間が対象である。そのため、本基本計画は来年度に始まり、猶予期間が1年弱残されているようにもみえる。実際、首相直属の総合科学技術会議で2004年12月に検討が開始され、本年6月を目処に中間取りまとめが行われる見込みである。しかし、例年の予算スケジュール、すなわち、次年度予算の編成作業が夏前後に始まるという流れを前提とすれば、第3期科学技術基本計画の策定作業はすでに大詰めを迎えているといえよう。
    そもそも95年に科学技術基本法が制定されて翌96年度に第1期科学技術基本計画が始動した背景を改めて振り返ってみると、バブル崩壊後、深刻な低迷に喘ぐわが国経済・産業の再生・復活を実現させるためには科学技術立国の積極的推進が不可欠という強烈な危機意識が朝野を分かたず醸成され共有されていたという事情を指摘することができる。さらに当時、アメリカでは「情報スーパー・ハイウェイ構想」をはじめとする政府の積極的な科学技術政策のもと、情報通信機器製造業や情報サービス業を中心に新産業や新事業が澎湃として立ち上がり、インフレなき未曾有の長期経済成長が始まっており、科学技術立国の範とすべき具体像がわが国の眼前で展開されていたという情況も挙げられる。
    こうした産業立国という観点から科学技術政策をみる限り、わが国においてもその成果は着実に上がってきていると評価できる。その象徴的事象が国際収支における特許等使用料収支の黒字化である。わが国の特許等使用料収支は長年にわたり赤字で推移してきたが、90年代半ば以降、赤字幅が次第に縮小して2003年に1,493億円の黒字に転換し、2004年には2,232億円へ黒字幅が拡大した。さらに、映画やソフトウェアをはじめとするコンテンツ分野での著作権料を除外して製造業分野に焦点を当ててみると、工業権使用料収支は97年に黒字に転換した後、年を追って黒字幅が拡大し、2004年には6,662億円に達している。
    非価格競争力の強化は近年のわが国企業業績からも看取することができる。製造業の前年比経常利益増減を、a.販売価格や仕入価格の変動による価格要因、b.販売数量や仕入数量の増減に伴う数量要因、c.人件費や利払い費などの固定費要因、の3要因に分解すると、まず、減益となった98年度と2001年度を除くと、94年度以来10年間にわたり、数量効果が増益の原動力となっている。それに対して、価格要因は、デフレに伴う販売価格の下落に加え、近年では素原材料価格高騰によって仕入価格が上昇している結果、総じてマイナスに作用している。一方、固定費要因は97年度まではマイナス要因であり、99年度以降、プラスに作用しているものの、数量要因の寄与額対比、3分の1以下に過ぎず、価格要因のマイナスを打ち消すに至らない小さな規模にとどまっている。ちなみに、2004年4~12月期についてみると、総額3.6兆円の前年比増益に対して、価格要因がマイナス5.8兆円、固定費要因が2.2 兆円のプラスであるなか、数量要因の寄与は7.3兆円に 及ぶ。
    そこで数量要因について一歩踏み込んでみると、90年代には販売数量と仕入数量がほぼ連動して推移していたのに対して、2002年以降、仕入数量の伸びが販売数量を下回る傾向が続いており、数量ベースでみると、販売数量1単位に対する仕入数量の比率が2004年10~12月期には90年代対比1割弱低下している。短期的には在庫を活用する結果、仕入れを増やす必要がないケースも想定されるものの、3年にわたって仕入削減の傾向が続いている点に着目し、さらに販売数量が増加している点も加味してみると、近年の数量効果は、より利幅の大きい製部品へのシフト、いわゆる知財戦略や差別化戦略による高付加価値路線が奏功した成果と捉えることができよう。

  2. 基本計画の問題点
    それでは、現下のわが国にとって科学技術政策上、克服すべき課題や拡充すべき点はないのか。今日、科学技術政策は、短期的な産業・企業競争力の問題にとどまらず、中長期的な経済・雇用政策上の重点課題であるうえ、防衛・安全保障上でも不可欠の政策テーマとなっており、枢要な国家戦略の一角を占める。とりわけ、少子高齢化問題への対応が焦眉の急となり、政府の21世紀ビジョンをはじめとして、生産性のさらなる上昇がわが国経済の活力維持・向上に必須との認識が拡大・浸透するなか、科学技術政策の重要性は一層増大しているといえよう。
    こうした中長期的視点を基軸に改めてみてみると、わが国の科学技術政策や研究開発体制には少なからぬ問題点がある。とりわけ、a.開発研究偏重型スタイル、b.大学や研究機関の応用・開発研究指向、c.政府と民間との希薄な連携、の3点は看過し得ない問題である。そこで、R&D先進国であるアメリカとの対比を通じて3点の問題を整理すると次の通りである。なお、アメリカは2003年値、わが国は2003年度値で比較した。

    (1)開発研究偏重型スタイル
    研究活動を、a.新たな真理や原理の発見を目指す基礎研究、b.基礎研究の発展によって新たな知見の獲得を狙う応用研究、c.新たな製品やサービスの創出に向け、基礎研究や応用研究の成果、さらに様々な要素技術を活用する開発研究、の3 分野に分け、日米の研究開発費ェアを対比すると、わが国では開発研究が62%、応用研究が23%、基礎研究が15%であるのに対して、アメリカでは開発研究が57%、応用研究は24%、基礎研究は19%となっている。このため、まず単純に研究資金の配分シェアからみて、応用研究のシェアは日米ほぼ同様であるなか、相対的にわが国では開発研究に重点が掛かる一方、アメリカは基礎研究をより重視した資金配分になっているといえよう。
    加えて、研究効率、すなわち、資金や人材など、研究活動に投入されたリソースに対して獲得された研究成果が多いか少ないかという問題がある。この点については、対象テーマによって研究活動から成果までの懐妊期間が同一とは限らないうえ、研究成果には、投入リソースというフローに加えて、関連分野も含めた研究実績やノウハウの蓄積、さらに人材の厚みや研究施設の充実度合いなど、研究活動に関連するストック、あるいは同一テーマや関連テーマでの競争の有無まで、様々な要素が複雑に絡むだけに、研究効率の定量化や可視化は容易でない。しかし、総じてわが国の研究活動は、上記、工業権使用料収支にみられる通り、開発研究の効率は満足すべき水準に達しているものの、基礎研究や応用研究の分野では欧米の後塵を拝しているとの指摘が少なくない。ちなみに、日本学術会議によると、第2期科学技術基本計画で重点分野と位置付けられ、優先的に予算配分が行われたライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジーの4分野についてみると、わが国は、アメリカ対比、ほぼ半分の資源投入で4分の1の成果、主要欧州各国対比ではほぼ2 倍の資源投入で1.2倍の成果にとどまるとされる。仮に重点4分野以外の基礎研究・応用研究でもわが国の研究効率がアメリカの半分とすると、基礎研究および応用研究に対する実質的な研究資金の配分シェアは、アメリカの43 %に対して、わが国は19 %に過ぎないという見方も成立し得る。

    (2)大学・研究機関の応用・開発研究指向
    次に研究活動を実施する機関をみると、日米とも、企業と大学・研究所が主要セクターである。そこで、それぞれについて研究資金の配分をみると、まず企業の資金配分は日米でほぼ同様である。すなわち、アメリカ企業が基礎研究に7%、応用研究に22%、開発研究に74%配分しており、それに対して、日本企業は基礎研究に6%、応用研究に19%、開発研究に75%配分している。内外市場の統合が進展し国境を超えて企業間競争が激化するなか、研究開発分野でも他の事業分野と同様に、資金の効率的活用と成果獲得に対する圧力が日米企業双方、かつ同程度に作用している現状に照らせば、日米企業の研究資金配分に相似性がみられることは当然といえよう。
    しかし、大学や研究所の資金配分は日米で異なる。まず、アメリカでは基礎研究に69%、応用研究に25%、開発研究に6%配分されているのに対して、わが国では、基礎研究に55%、応用研究に37%、開発研究に9%配分されている。わが国の情況に即していえば、アメリカ対比、応用・開発研究に対する大学や研究所の指向性の強さは、近年の産学連携に向けた積極的な姿勢、すなわち、わが国経済・産業の再生や活性化を目指して、大学や研究機関が保有する知的財産、さらに研究リソースを最大限活用しようとする取り組み、例えばTLO や共同研究といったプロジェクトが強力に推進されてきた結果という側面は否定できない。
    もっとも、そうした産学連携という視点からみれば、わが国の取り組みはアメリカの大学や研究機関の成功スキームを取り入れたものであり、アメリカの大学や研究機関が行っている産学連携はわが国の現状をはるかに上回る。わが国以上に産学連携が積極的かつ幅広い分野で推進されてきたアメリカにおいて、その大学や研究機関は、わが国のように5割強にとどまらず、研究資金の7割を基礎研究に配賦しており、応用研究や開発研究よりも基礎研究を重点的に推進するスタンスが鮮明である。
    こうした企業と大学・研究機関の棲み分けの背景には、それぞれの専門性や特色の違いがある。すなわち、応用研究以降、とりわけ開発研究の遂行は、新たな製品・サービスの創出に直結するため、マーケティングや市場ニーズを先取りしたデザイン、あるいは生産・供給体制の迅速な構築など、資金調達力も含め、新市場を生み出す総合力を備えたセクターがより相応しい。それに対して、応用研究以前、とりわけ基礎研究は、研究コスト自体、開発研究に比べて一般に小規模にとどまる一方、従来にない真理や原理を発見し新たな体系を構築することを目的とし、従来の枠組みを超えた異分野の融合や触発を通じて成就するケースが少なくないため、特定分野に集中することなく多様な分野の知見や人材の活用が可能であり、研究の自由度がより大きいセクターに優位性がある。

    (3)政府と民間との希薄な連携
    さらに研究資金の供給主体についてみると、日米とも政府が中心であるものの、その配賦分布は日米で大きく異なる。
    まずアメリカでは、大学・研究機関に5割、政府機関に3割、企業に2割、研究資金が配分されている。それに対してわが国では、大学・研究機関に5割、政府機関に4割強配分されているなか、企業に渡る資金は全体の5%に満たず、シェアを比べるとアメリカの4分の1にとどまる。もっとも、わが国の場合、政府が企業の研究開発に対して積極的にサポートを行わなくても、新たな製品・サービスの開発に成功し売り上げが増大する一方、工業権使用料収支が黒字に転換するなど、企業の自助努力によって経済・産業の競争力強化が実現されてきた。その意味では、少なくともこれまでのところ、わが国政府が企業の研究開発をサポートする必要性は小さかったとみることもできよう。
    それに対して、アメリカの場合、日独の台頭を嚆矢に国内の産業・市場が蚕食され、とりわけ80年代入り後、空洞化問題が深刻化するなか、新たな事業・市場の創出が重要な政策課題となった。その結果、具体的打開策として、企業規模の大小を問わず、事業化の成功確率が大きい企業に対して資金面を中心に政府が積極的にサポートする体制が今日まで整備されてきた。翻ってわが国についてみると、少なくとも当面、経済・産業の競争力が揺らぐ懸念は小さい。しかし、ナノテクやバイオ、オプトなど、従来型技術と不連続な分野で新産業や新市場の創出・成長・発展が有望視されるなか、先進国か否かを問わず、そうした戦略的分野を中心に各国政府が自国企業の研究開発に対する支援に一段と注力し始めており、国際的な研究開発競争の色彩が強まっている。そうした情勢下、わが国経済・産業が現下の強靭な競争力を中長期的にも堅持していくためには、企業の研究開発に対する政府の支援体制の整備は焦眉の急であろう。
    加えて、大学の研究開発に対する政府の支援について、内訳をみると、アメリカの場合、資金の供与先は、MITやスタンフォード大学など、有力私立大学が中心である。それに対して、わが国では国公立大学向けが大半を占め、私立大学に渡る資金は全体の4%に過ぎない。そこで、改めて企業も含め、公的セクターと民間セクターに分けてみると、政府の研究開発資金の9割が特殊法人などの政府機関と国公立大学に配賦され、残り1 割の半分ずつが企業と私立大学に配分されている。

  3. 今後の課題
    それでは、第3期科学技術基本計画で推進すべきテーマは何か。総合科学技術会議をはじめとして各方面での議論や主張にみられる通り、ヒト・モノ・カネの問題を中心に様々な課題が指摘可能である。主なものを挙げると、理科離れに象徴される人材枯渇のリスクや懸念の克服および質量両面で重量級の陣容構築に向けて教育・研究制度の拡充を図るべきである。研究成果の生産性向上に向けて研究施設や設備の更新・新設を推進すべきである。政府の研究資金について、研究サポート人員の人件費など、間接費への対象拡大を進める一方、重点分野を中心に欧米各国を目標に資金量の拡大を目指すべきである、などがある。しかし、上記3点の問題に即し、わが国経済・産業の強靭な競争力を少子高齢化が本格化する21世紀においても中長期的に堅持するという視点からみれば、とりわけ、a.位置付けとミッションの明確化、b.競争的メカニズムの徹底、c.関連諸制度の整備、の3点が最重要課題といえよう。

    (1)位置付けとミッションの明確化
    研究成果の効率性を引き上げ、研究の生産性を上昇させるためには、まず、企業と大学、研究機関とを問わず、実際に研究活動を行う各組織あるいは各セクターについて、それぞれ位置付けとミッションを明確にすることが大前提である。それによって初めて、a.各機関が個別研究プロジェクトの優先順位を決定して実施テーマを選択し、b.いずれの機関に任すかの実施機関の適切性に関する相対評価が行われ、c.一つひとつの研究成果に対して的確に評価し、d.そうした経験やノウハウを次のプロジェクトに生かしていく、という研究活動を巡る一連のPDCAサイクルを回すことが可能になる。とりわけ、今日のように科学技術が担うべき機能が、単に知的フロンティアの開拓にとどまらず、人材育成や技術ネットワークの構築、経済・産業・雇用政策の中核ツール、安全保障上の有力な課題解決など、様々な分野に拡大した結果、研究開発が達成すべき目標や実現すべき価値が多様化し輻輳化する事態が不可避となるなか、位置付けやミッションを明確化し、その徹底を図るという作業が不断に遂行されない限り、適切かつ有効な研究活動は一段と困難にならざるを得まい。
    例えば、従来の研究成果と不連続な分野が有望視される傾向が強まるなか、企業など、民間セクターと平行して、大学や研究機関が応用研究や開発研究に注力し、幅広い分野に跨る研究成果や人的ネットワークを駆使するなど、その優位性を発揮する、いわば、現行のわが国大学・研究機関の在り方も有力な選択肢の一つといえよう。しかし、事業化に隣接した研究分野に注力する場合、成果評価項目として事業化の成否は不可欠となり、大学や研究機関での応用研究や開発研究に、市場ニーズの動向調査をはじめ、事業化に向けた総合力をうまくマッチングさせる必要性が増大する。加えて、そうした新たなスキームと、従来、大学や研究機関が主として取り組んできた基礎研究分野での研究推進スタイルとの調和も図らなくてはならない。しかし、そうした問題の克服には多大な労力と知恵が必要となる懸念が大きくないか。

    (2)競争的メカニズムの徹底
    次の課題は、明確化された位置付けのもと、付与されたミッションを最大限果たし、研究効率の引き上げを実現するために、競争的メカニズムを、研究活動全般にわたり例外なく徹底することである。すでに、そうした取り組みは始まっており、各研究プロジェクトがそれぞれ資金獲得を目指す、いわゆる「競争的資金制度の拡充」である。競争的研究資金は年を追って増加しており、2000年度の2,968億円から2005年度には4,672億円へ大幅に増大した。
    しかし、第2期科学技術基本計画で立案された第1期対比倍増目標は、2000年度比2005年度水準が1.6倍にとどまり、未達となった。加えて、政府の科学技術関係経費に占める競争的研究資金のシェアは2005 年度でも13.1%に過ぎず、アメリカの3割強という水準対比、大きく見劣りする。
    さらに、競争的メカニズムの導入を促進する観点からみると、民間セクターの研究活動に対する政府のサポート体制の強化がとりわけ有効であろう。例えば、アメリカでは、企業規模を問わず、企業に研究資金を配賦し、当該企業が有望なシーズを保有する大学や研究機関と連携して、事業化に向けた研究活動を遂行する制度が定着し幅広く活用されている。こうしたスキームを活用すると、新規性や市場性の低い研究シーズが除外され、事業化に消極的な大学や研究機関が排除されるなど、いわば市場原理を通じた選別が行われる結果、競争的資金配分に必要なコスト負担が軽減される一方、市場動向に応じた研究活動を通じ、研究成果の効率化も期待可能である。それに対して、基礎研究分野は、市場原理を活用した選別には不向きである。しかし、開発研究分野で市場原理を活用した選別が行われ、競争的資金配分制度のリソースが節約される場合、節約によって捻出されたリソースを活用することで、研究プロジェクトを専門家が詳細に検討するピア・レビューの実施など、より充実した競争メカニズムの構築ができよう。

    (3)関連諸制度の整備
    一連の研究活動を、わが国経済・産業の競争力強化に結実させるためには、単に科学技術政策の拡充だけでは不十分であり、総合的な政策推進が不可欠である。広い視野からみれば、この問題には、教育や労働、金融など、様々な法制やスキームが関連しており、それぞれ重要な役割がある。
    しかし、研究成果をベースに新事業や新市場を立ち上げるには、市場化への隘路、いわゆる死の谷と呼称される困難なプロセスを成功裏に研究成果が通過するための方策が最大の焦点であり、先進国と途上国とを問わず、様々な取り組みが各国で行われている。そのうち、有力策として注目され、制度を創出したアメリカのみならず、近年、欧州各国でも活用が拡がっているスキームがLLC(有限責任会社、合同会社)である。事業化を実現するうえでLLCの最大の特徴は、a.法人格を持ち、有限責任でありながら、b.納税面では、会社の所有者たる株主の個人所得課税か法人課税のいずれかを選択できて税負担が軽い、の2点である。わが国でも、商法改正を巡る一連の議論のなかで様々な検討が重ねられているものの、税負担の面で決着が着いていない。
    さらに、研究開発は事業リスクが大きいうえ、近年、研究レベルが一段と向上し、研究範囲も飛躍的に拡大した結果、企業が社内リソースだけで実施することが次第に困難になるなか、その受け皿として活用が拡がっているスキームがコーポレート・ベンチャリングである。様々な組み合わせや態様があり、統一的な定義や整理は困難であるものの、標準的なモデルの特徴を指摘すると、企業が研究開発機能の一部を、大学や研究機関など、事業運営コストが相対的に小さいNPOにアウト・ソースし、一国経済全体の研究開発コストを抑制しながら、多数のNPOが研究活動を行うことで多様な分野での研究プロジェクトの実施を進め、事業化が近づいた段階に至ると、マーケティングや生産体制の整備など、企業の積極的参画によって死の谷を乗り越えていくという研究開発スタイルである。このスキームに対する支援策には様々なパターンがあり、イギリスでは、企業が研究機関に対して資金を出資した場合、キャピタル・ゲイン課税が優遇される一方、アメリカでは、NPOへの寄付金に対する課税減免措置を通じてサポートが行われている。
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