RIM 環太平洋ビジネス情報 2006年05月号Vol.6 No.21
世界に影響を及ぼす中国の石油需要
2006年05月01日 孟芳
要約
中国では高い経済成長に伴い、エネルギー消費量が急増してきた。04年時点で、世界の一次エネルギー消費量に占める中国の割合は13.6%と、アメリカに次いで第2位となり、石油消費量も03年に日本を抜いて世界第2位となった。 一方で、原油の年間生産量は1~2%程度の伸びにとどまったことから、原油の対外依存度(99年の19%程度から2004年には42%)が大きく上昇した。今後、中国は2020年まで目標とする年平均7.2%の経済成長を達成するために、03年の年間原油消費量の倍近くに相当する5億トンの原油需要が予想され、原油の輸入依存度は60%を突破する見通しである。 さらに、中国はエネルギー関連の中長期国家戦略の構築が大幅に遅れているほか、石油産業も様々な問題点を抱えている。エネルギー産業を統括する専門の国家組織が存在しないことに加えて、3大国有企業が石油産業のほぼ全ての市場を独占しており、現行の石油製品の価格形成メカニズムは市場の需給関係を十分に反映出来ない。 エネルギー関連の国家戦略の構築は欧米、日本などに比べて30年ほど遅れ、04年以降ようやく本格的に動き出した。中国政府が打ち出した主な目標には、a.2020年までに、一次エネルギー消費量を25億石炭換算トン/年間以下に抑えること、b.単位あたりGDPの創出に必要なエネルギー消費量を毎年2.3~3.7%削減し、2020年までに合計20%の省エネ目標を達成すること、などがある。 石油産業の中長期国家戦略については、a.原油調達手段の多様化により原油の安全確保を図ること、b.石油精製能力の向上により国内の石油需要を保障すること、c.技術革新や石油代替の開発により省エネ目標を達成すること、d.国家戦略石油備蓄制度を確立すること、などがあげられる。 中国政府は、主要原油生産国との友好関係を深めているほか、3大石油企業の海外進出を促進し、国内の省エネ計画を実行するなど、中長期的な原油の安全確保に積極的に取り込んでいる。しかし、主な原油供給国の政情不安定、原油確保を巡る周辺国との協力的な関係の構築、中国系企業の海外進出の経験不足など、多くの課題を乗り越える必要がある。