コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

Business & Economic Review 2005年05月号

【STUDIES】
金融・財政両政策間の相互反応に関する経済分析-長期デフレへの政策対応という視点から

2005年04月25日 新美一正


要約
  1. 本稿は、過去3稿と同様に、長期化するデフレーションに対して、マクロ経済政策を活用したリフレーション政策の発動が必要であるとする立場から、政策的インプリケーションを導出することを目的に書かれたものである。ただし、これまでの論稿では明示的に取り上げられなかった財政政策の機能についても、とくに金融政策との間の相互反応に注目して、理論・実証の双方から分析した点が、従来にない新しい試みである。

  2. 最初に、インフレーション理論の変遷に関して、とくに金融・財政両政策との関連性を念頭に置いて、歴史的時間軸に沿って考察した。その際の問題意識は、戦後、財政学の応用分野として出発したインフレ理論が、貨幣的インフレ理論に転化し、さらに、財政理論とのかかわり合いを復活させてきた経緯の解明にあった。「新しい物価理論」として話題を集めている物価水準の財政理論(FTPL)に関して、詳細に検討しているのも、こうした問題意識とかかわっている。一般に、FTPLは積極的な財政政策によるデフレ脱却を主張する学説と理解されているが、正鵠を得ていない。むしろ、デフレ処方箋という視点から見たFTPL の貢献は、シーニョリッジ(通貨発行益)の効果を明示的にモデルに取り込むことにより、ゼロ金利近傍における拡張的金融政策の有効性を明確に示した点であろう。

  3. 続いて、FTPL が重視する政府の異時点間予算制約という縛りを取り払い、短期的な分析視野に特化したDixit and Lambertini[2003 ]の理論モデルを取り上げた。彼らの分析結果のうち最も興味深いのは、金融政策がコミットメントに沿って行われる場合ですら、裁量的な財政政策が行われるとそれが金融政策のコミットメントを破壊してしまう可能性を、示している点である。このことは、金融政策のコミットメントを有効とするためには、財政政策に関しても事前の強いコミットメントが不可欠となることを意味している。

  4. 実証分析パートでは、日・米・英・独の4カ国の実際の経済データを使用した構造VAR 分析により、財政・金融両政策間の相互反応の存在や規模およびそれらの方向性に関する分析を行った。分析結果は多岐にわたるが、比較的に顕著な特徴は以下の3点であった。
    (1)金融・財政両政策間の相互反応の方向性は、国によりかなり異なり、また同一国であっても、方向性が逆転するケースや反応自体が有意性を失うケースも見られた。
    (2)80年代後半以降は、金融政策ショックに対する財政政策の反応が有意性を失っており、これは対象4カ国を通じて同一であった。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ