Business & Economic Review 2007年12月号
【STUDIES】
地域メッシュを利用した東京・大阪の地価動向の検討
2007年11月25日 吉本澄司
要約
- 三大都市圏を中心に地価の上昇が加速しバブル再燃を懸念する見方も出ているが、日本全体や都道府県単位で経済指標と地価を比較検討した限りでは、収益性からの大幅な乖離は明確には起きていない。
- ただし、地価上昇が目立つのは一部の地区、地点にとどまり、それ以外の多くの地区、地点では地価が下落していたり、上昇していても小幅であったりするために、全国単位や都道府県単位の平均による検討では二極化している地価の現状をとらえ切れないのではないかという点が課題として残る。
- この課題に対応するために、地域を網の目状に細分した小区域単位で地価とファンダメンタルズを突き合わせてみると、東京都心4区や大阪市中心部の地価水準がそれ以外の一般的な地区に比べて大幅に高いのは、これらの地区がオフィス街や商業繁華街として一般的な地区に比べて突出した経済力を有しているためである。
- 最近の地価の変化に着目すると、東京都心部や大阪市中心部では、実際の地価同様、収益性の観点から求めた上昇率も大幅になることから、必ずしも経済力からかけ離れた地価上昇が起きているとはいえない。
- 他方、地価の試算値の上昇には、不動産投資のリスクプレミアム低下が少なからず寄与していることから、リスクプレミアムの低下が今後も続き、その要因の寄与度によって地価の大幅な上昇が今後も止まらないようであれば、投資の強気な姿勢に対する警戒が必要になってくるだろう。
- 中心部以外の小区域では、中心部から離れるほど地価上昇率が小幅となっており、地価上昇は中心部の限定的な範囲にとどまっているようにもみえるが、中心部以外の小区域の小売業販売額は減少している可能性もあることから、小幅であっても地価上昇が地域の経済状況に見合ったものかどうかが問題となる。
- 中心部以外における地価上昇は、事業を継続したり新たに開業や開店を考えたりしている企業や個人にとって、期待できる売上げや収益に比べて不動産入手のための金額が上がったり、地代や固定資産税などの負担が重くなったりすることから、事業の制約要因となるおそれがある。
- 最近の地価動向に関しては、緊急に警戒を要する状況とはいえないものの、中心部とそれ以外の区域それぞれ個別に留意すべき点があり、今後の動きには引き続き注意を欠かせない。