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Business & Economic Review 2007年11月号

【STUDIES】
連結企業グループの経営分析-分社化構造と連結収益性の実証的検討

2007年10月25日 新美一正


要約

  1. わが国企業の関係子会社数は趨勢的に増加傾向にあり、上場企業1社当たりの子会社数は平均して20~30社を上回る規模に達している。こうした「企業集団化」の潮流は、わが国だけではなく、アメリカ、イギリスを始めとする先進資本主義国に共通の現象であるが、M&Aの少ないわが国の場合、企業集団化がもっぱら、企業内部に存在する事業部門のスピンオフ、いわゆる「分社化」によって、進展してきたという特徴がある。

  2. 1980年代から90年代初頭にかけ、わが国企業の子会社戦略は、それまでの持分法適用会社中心から連結子会社中心へ明確な移行を遂げた。これには、とりわけ93年に連結子会社の範囲に関する、いわゆる10%ルールが廃止された影響が大きい。また、わが国の証券取引所・証券業界は、これまで親子上場に関して積極的な姿勢を示してきたが、最近になって、親子間の利益相反問題や、グループ全体の時価総額最大化を求める機関投資家の圧力などを背景に、親子上場に対しては否定的な空気が濃くなりつつある。子会社をグループ内にとどめ、親会社の支配力を温存する形での子会社株式公開は、今後は困難になっていくと予想される。

  3. 包括的な企業財務データベースを用いて、分社化の進展が連結収益性に与える影響を実証的に検討したところ、子会社数で定義される分社化尺度と、連結売上高比で定義される親会社からみた分社化尺度の双方において、分社化の進行が連結収益性にネガティヴな影響を持つことがわかった。業種別推定では、有意な結果が得られたケースはごく少なかったが、それらのほとんどにおいて、全サンプル推定と同様に、分社化の進行が連結収益性にネガティヴな影響を与えるという結果が得られた。また、業種によっては、連結収益性におけるスケール・メリットが存在することが確認された。

  4. 親子上場が行われている場合には例外的に子会社の財務諸表を入手することができる点に注目して、代表的な国内製造業3社が形成する企業集団の収益性に関するケース・スタディを、親会社単体、親会社連結および上場子会社(連結または単独)の3種類の財務諸表データをすべて利用して行った。その結果、上場子会社が存在する場合、企業集団全体の収益性分析に対して、子会社の財務諸表情報は有用であることがわかった。したがって、子会社株式の上場廃止は、情報面では、親会社株主にとってマイナスの影響を与えることになる。今後、親子上場を抑制する方向で規制改革が進み、現存する上場子会社に対しても完全子会社化・上場廃止の傾向が強まるとすれば、上場廃止以降の子会社情報開示のあり方や、連結財務諸表におけるセグメント会計の充実などの論点に関する議論が必要である。
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