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Business & Economic Review 2007年11月号

【REPORT】
外貨準備運用積極化の是非

2007年10月25日 調査部 マクロ経済研究センター 主任研究員 牧田健


要約

  1. 本稿では、わが国で外貨準備の運用積極化が一部で議論されている背景を整理するとともに、運用積極化を図っていくうえでの問題点について検討した。

  2. わが国の外貨準備は、1999年以降の断続的な円売りドル買い介入によって大幅に増加し、2007年8月末時点で9,321億ドルと、他の先進国や、外貨準備の増加が問題視されている発展途上国と比べても、異常な規模にまで拡大している。こうした状況下、国営ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド)を設立する動きが、世界的な広がりをみせており、とりわけ、わが国と同様に外貨準備が増大している韓国・中国での同ファンド設立が、わが国での外貨準備運用を巡る議論を盛り上げる触媒となった。もっとも、韓国、中国ともに、自国通貨売りドル買い介入が自国金利高の影響等から結果的に財政負担増になるという切迫した事情があった。この点、超低金利が続く日本では、外貨準備の運用積極化について慎重に議論を行っていくことができる。

  3. わが国が外貨準備の運用積極化を図っていくうえで主に三つの問題点がある。一つは、外国為替資金特別会計法上のルールである。現行のルールでは、外貨準備の運用益は、円ベースで確定しない限り、利益として計上できない。一方、利息分を円転すれば円高ドル安を招きかねないことから、運用益と見合いの為券(外国為替資金証券)を発行する形で、外国為替資金特別会計の利益として計上しているのが実情である。こうしたルールのもとでは、運用利回り上昇に伴う外貨準備の増加は、必然的に国の借金増加をもたらすことになる。なお、外貨準備の運用益は一般会計の歳入に繰り入れられ、財政再建に貢献しているようにみえるが、その利益が為券追加発行によって計上されていることを踏まえると、単に為券と中長期債の間で債務の振替を行っているに過ぎない。

  4. 第2に、わが国政府が外貨準備の主要な運用対象を米国債から他の資産に乗り換えることが現実的に可能なのかという問題がある。わが国の外貨準備での米国債運用額は、米国債発行額の約12%を占めていると推定され、その売却は米国債市場に多大なインパクトを与えかねない。しかしながら、米国債売却なしに、運用利回りの大幅な改善は期待できないというジレンマがある。

  5. 第3は、国営ファンドを持つことの是非である。外貨準備の裏付けとして為券という借金がある以上、運用失敗は必然的に国民負担増大に直結する。国が運用に積極的に乗り出す必要性があるのか、単純な諸外国への追随ではなく、幅広い議論を要する。

  6. 以上のように、外貨準備の運用積極化にはさまざまな問題があり、また、外貨準備が異常な規模に拡大していることを踏まえると、運用利回り向上を目指すよりも、外貨準備を減らしていく、少なくとも増やさないようにするのが本筋である。そのためには、円安局面での円買いドル売り介入をためらうべきではなく、また、少なくとも米国債利払い分は臨機応変に円転し、外貨準備、為券発行の累増を防止すべきといえる。
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