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Business & Economic Review 2005年03月号

【REPORT】
どうすれば地域の知財活用力が高まるのか-共通指標に基づくベンチマーキング

2005年02月25日 創発戦略センター 上席主任研究員 金子直哉


要約
  1. 知的財産が競争力の源泉となる時代を迎えたことに伴い、国全体を革新するという発想では、変化のスピードが遅すぎて、グローバルな競争についていけなくなった。国から地域に重心を移し、地域という小さな単位のなかで、知的財産の創出・活用を促進していく必要がある。そのうえで、これらの地域活力を総合し、日本全体の競争力を高めていく戦略が求められている。

  2. ここでは、そのための仕組みとして、「地域の知財活用力を評価する共通指標」を取り上げた。各地の特徴を比較するための共通指標を導入し、それぞれの強みをベンチマークすることで、どの地域に対し、どのような支援を行えば、日本全体の競争力を高めるうえで最も効果があるかを明らかにしようという考え方である。

  3. まず、“地域の強み”を把握するための最も有効な指標が、地域別の発明者数であることを示した。さらに、実際に“地域の強み”を把握する場合は、分野別の比較が重要になることを明らかにした。産業分野や技術分野など特定分野に絞って各地の発明者数を比較することで、他では見られない“その地域独自の強み”が見つかるようになる。

  4. そのうえで、こうして見つけた“強み”を核に地域の活力を高めていく仕組みを具体的に検討した。地域の活力を高めるには、“大学や研究所における発明”を、いかに企業ニーズに近づけていくかが鍵を握る。つまり、地域の知財活用を促進するには、産学連携に取り組む企業のインセンティブを高め、知財を創出する大学や研究所の力を最大限に引き出すことが重要になる。

  5. そのための方策として、「企業のインセンティブを高める」「大学の力を引き出す」「研究所の力を引き出す」「地域の力を引き出す」という“四つの視点”から、地域の知財活用を促進する仕組みを“40のモデル”としてまとめ、その特徴とポイントを抽出した。

  6. 日本全体として見た場合、地域から生まれてくる知的財産と知的財産が地域にもたらす活力は強い相関を持つ。日本各地には“地域の強み”となる知的財産を生かすためのインフラや環境条件が相当レベルで整備されており、知的財産立国を実現するための十分な基盤が存在している。

  7. これからは、地域が、知的財産による振興を競い合う時代に入る。他にはない“独自の強み”をいち早く見つけ、これを活用する態勢を整えた地域が、活性化していくことになる。“地域の強み”を把握するための方策が、競争の鍵を握ることになる。

    *本稿は、財団法人経済産業調査会が発行する「特許ニュース」に連載した論文に加筆、修正したものである。独立行政法人工業所有権情報・研修館の事業として実施された「地域の知財活用力を評価するための共通指標に関する調査研究(平成15年3月)」および「地域における知財活用の仕組みと成功条件に関する調査研究(平成15年3月)」をもとに、最新動向の検討を加えた内容となっている。独立行政法人工業所有権情報・研修館及び財団法人経済産業調査会に対し、記して謝意を表したい。ただし、本稿に残存する誤謬はすべて筆者の責任である。


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