Business & Economic Review 2007年07月号
【STUDIES】
地域間所得格差をどうみるか
2007年06月25日 調査部 主席研究員 太田清
要約
- 所得等の地域間格差の拡大が指摘されている。本稿では、地域間所得格差、主に大都市地域と非大都市地域の格差(データとしては都道府県間格差)をどうみるべきか、個人間所得格差との関わりでどうみるべきか、その格差にどう対処すべきかなどに関連して、幾つかの分析を行った。
- 第1は、地域間所得格差の大きさとその評価に関することである。所得は個人に帰属するものであるので、所得格差は基本的には個人間の問題である。そのような観点から、地域間所得格差が個人間所得格差のどの程度を占めるかを求めてみると、10分の1から6分の1程度であり(幅があるのは所得概念の違い等による)、さほど大きくない。また、日本の地域間所得格差は国際的にみても大きくはない。
- しかし、第2に、最近は地域間所得格差が拡大している。よく使われる一人当たり県民所得では最近の格差は1990年頃の格差に比べてまだ小さいが、指標によっては90年頃の格差の水準かそれを超えているものもある。格差の拡大テンポも緩慢なものではない。2006年には格差の拡大が鈍化している可能性もあるが、拡大傾向には注意を払う必要がある。また、第3に、地域間所得格差の拡大に対応して所得の高い地域への人口移動が増えている。
- 第4に、地域間格差の拡大を需要面から寄与度分解してみると、移出や公共投資(とくに後者)が、90年代は格差を縮小させる方向へ寄与していたのに対し、最近では拡大させる方向に寄与するようになってきている。ただし、公共資本ストックの整備状況の変化が供給力効果(生産力効果)を通じて格差を拡大させたとは考えにくい。