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Business & Economic Review 2006年01月号

【REPORT】
活用の望まれる指定管理者制度-先進事例を参考として

2005年12月25日 調査部 ビジネス戦略研究センター 主任研究員 高坂晶子


要約

  1. わが国では、「民間でできることは民間へ」をテーマに、官民の役割分担の見直しが進められてい る。このうち指定管理者制度は2003年6月に創設された新しいスキームで、地方自治体において運用が開始されている。

  2. 指定管理者制度は、住民の福利厚生のため自治体が保有する「公の施設」の管理業務を、一般の企 業やNPOなどにも開放するものである。制度の設立目的は、民間の経営手法やノウハウを導入することによって、公共サービスの質の向上と運営の効率化の両立を図る点にある。

  3. 本制度のもと、自治体はすべての「公の施設」について、2006年9月までに管理体制を見直し、指 定管理者制度と直営のいずれかを選択する必要がある。実際の導入状況をみると、制度創設後1年の時点(2004年6月)で新制度の導入に着手した自治体は全体の13%にとどまる。このなかには、従来 施設管理に従事してきた自治体の外郭団体がそのまま管理者に指定されているケース、あるいは公募や第三者による審査を行わず自治体内部で管理者を決定しているケースが少なくない。

  4. 自治体の指定管理者制度への対応は総じて消極的であるものの、なかには施行当初から本制度に着 目、採用し、「公の施設」の運営刷新に取り組む自治体も存在する。例えば、東京都板橋区は、区民や民間事業者への説明や情報開示に注力しつつ、行政コスト削減とサービス向上のため指定管理者を 公募し、複数の運動施設を一括委託した。兵庫県宝塚市は、住民や地域社会のニーズ把握に努めつつ、経営が行き詰まった温泉施設の再開と地域活性化のため、指定管理者を公募し、運営委託した。

  5. 先進事例からは、自治体が住民や地域社会、民間事業者など外部の利害関係者への対応を重視し、 「開かれた」スタンスを取ったことのメリットを指摘できる。すなわち、a.自治体からの説明や情報開示によって、制度に対する住民や地域社会の理解が促され、指定管理者の導入、定着が円滑に進ん だ、b.仕様・条件が具体的に示された公募によって事業者の競争が活発化し、質の高いサービスを効率的に提供可狽ネ仕組みが形成された、c.地域の様々な主体から出された意見、要望に基づいて、制 度に関する独自の工夫や、施設を活用したまちづくり事業など地域性のある取り組みが実現した、の3点が主なものである。

  6. 一般に、住民はじめ外部主体が行政に関与すると混乱が生じかねない、として情報開示や住民参加 に消極的な自治体は少なくないものの、今後、指定管理者制度を活用するにあたっては、このようなスタンスの再考が必要である。具体的には、指定管理者の選定に際し、公募や第三者委員会による審 査等外部に開かれた手続きに積極的に取り組むことが望まれる。さらに、指定管理者制度を突破口に、自治体の業務のうち民間にゆだねる範囲の拡大や、指定管理者制度以外の官民役割分担スキームの活 用などに着手することが自治体の今後の課題といえよう。
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