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中国グリーン金融月報【2021年8月号】

2021年09月28日 王婷


 2020年9月22日に習近平国家主席が国連総会で「2030年にCO2排出ピークアウト、2060年にカーボンニュートラルを実現する」との目標(中国では、「3060目標」という)を宣言しました。これを契機として、中国ではグリーン金融への取り組み機運が一層高まっています。
 「中国グリーン金融月報」は、グリーン金融に関する中国の政府、関連業界、関連機関の政策、施策を公開情報から収集・整理し、重要な政策については解説を加えたものです。グリーン金融に関心のある日本の方々が中国の関連動向を理解する一助として頂ければ幸いです。
「中国グリーン金融月報」は、毎月発行する予定です。

1.今月のトピックス 
【中国人民銀行】人民銀行が2021年下半期の業務会議を開催
 7月30日、人民銀行は2021年下半期の業務会議を行い、上半期の業務を総括し、下半期の重要課題を明確にした。グリーン金融に関して、以下のように言及した。
 2021年上半期の成果について、グリーン金融の開発が加速した。グリーン金融に関する「3つの機能」と「5つの柱」という基本的な枠組に沿って、グリーン金融関連の一連の作業が加速され、進展した。新しいグリーンボンド支援カタログが発表されたこと、カーボンニュートラルボンドが銀行間市場で発行されたこと、ピークアウトとカーボンニュートラルの目標にあうインセンティブ評価メカニズムが確立されたこと、銀行業に対する金融機関のグリーン金融の評価が完備されたこと、である。
 また、2021年下半期の任務について、全体の協調をさらに進め、グリーン金融の改善を加速させるよう指示があった。具体的には、炭素排出削減支援ツール導入を促進、条件にあった金融機関に低コストの資金を提供、金融機関に排出削減効果の大きい重点分野に対して優遇金利で融資を提供するよう求めた。炭素排出の情報開示とグリーン金融評価をしっかりと推進する、気候変動リスク管理を強化し、気候変動リスクのストレステストを秩序立てて実施する、グリーン金融の主要課題に関する調査・研究を強化するなども求められた。
2021-08-04 中国政府HP http://www.gov.cn
 コメント:2016年8月31日に、中国人民銀行をはじめとした7つの政府機関が「グリーン金融体系構築に関する指導意見」を公表した。以来、中国政府は中国人民銀行を中心にグリーン金融の発展に関する政策や施策の策定に取り組んできた。「3つの機能」と「5つの柱」という枠組みは2021年3月の政府工作報告の中で提示された内容である。「三大機能」とは、グリーン開発に対する金融支援の三大機能、すなわち資源配分、リスク管理、市場価格設定を十分に発揮することを指す。
 第一に、金融政策、信用政策、規制政策、情報開示の義務化、グリーン評価、業界の自主規制、製品のイノベーションなどを通じて、金融資源を低炭素プロジェクト、グリーン変革プロジェクト、炭素回収・貯留などのグリーンイノベーションプロジェクトに誘導し、活用する。第二に、気候変動リスクのストレステスト、環境・気候変動リスク分析、グリーン・ブラウン資産のリスクウエイト調整などのツールを通じて、金融システムの気候変動関連リスクの管理能力を強化する。第三に、国内の炭素排出取引市場の構築を促進し、炭素先物などのデリバティブ商品を開発し、取引を通じて炭素排出量に合理的な価格を設定する。
 「五つの柱」とは、グリーン金融基準制度の改善、金融機関への監督と情報開示義務の強化、インセンティブと抑制のメカニズムの段階的な改善、グリーン金融商品と市場システムの継続的な充実、グリーン金融の国際協力の場の積極的な拡大を指す。

全国炭素排出取引市場運営から1ヶ月を迎え、活動をさらに強化することが必要
 全国炭素排出量取引市場が発足してから満1ヶ月を終えようとしている。上海環境取引所のデータによると、8月13日現在、全国炭素市場で取引された炭素排出枠(CEA)の累積取引量は6,518,800トン、累積取引額は3億2,900万人民元である。8月13日、CEAの終値は1トンあたり54人民元で、初日(7月16日)の始値から12.5%、終値から5.41%上昇した。
 上海環境エネルギー取引所の頼暁明理事長はインタービューにおいて、現状で取引量が少ない理由として、主に2つの点を挙げている。第一に、企業の取引口座開設率が約80%と(2,162社の発電企業のうち約1,600社が口座開設完了)まだ少ないこと、第二に、今回の取引に参加する企業の多くは、取引の経験がなく、プロセスや管理方法などに対する理解が不十分で、取引への参加意欲が高くないこと、である。
 今後について、8つの分野で努力をすべきと、頼暁明理事長は指摘した。第一に、制度面での改善。 第二に、市場のカバレッジを拡大すること。 来年には電力企業に加え、さらに2〜3の業界が炭素市場に組み入れられる可能性が高く、 第14次5カ年計画期間中に、8つの主要産業すべてが炭素取引市場に組み込まれると期待されている。第三に、適格な投資家をできるだけ早く市場に参入させること。 金融機関の経験やリスク管理能力を活かして、炭素市場への参加を積極的に支援することが期待される。 第四に、リクイディティ・プロバイダー・メカニズム(最適な市場価格で取引をマッチングできる仕組み)の設立を検討すること。第五に、検証報告書モニタリングメカニズム(MRVメカニズム)の改善。MRVの質を継続的に向上させる必要がある。第六に、配分メカニズムを最適化し、有償配分の割合を徐々に増やしていくこと。第七に、商品のイノベーションをしっかり推進すること。世界最大の炭素スポット市場の構築を積極的に進める一方で、先物などのデリバティブについても、非標準から標準へ、市場外取引を市場内へと段階的に発展させていくことが必要である。上海環境エネルギー取引所では、カーボンスワップやカーボンフォワードなどの関連商品を検討している。第八に、管理監督制度の改善と関連メカニズムの確立である。
2021-8-13 中国証券報 http://www.cs.com.cn/xwzx/hg/202108/t20210813_6193867.html
 コメント:7月16日に中国の全国統一炭素排出権取引市場は取引を開始した。2015年9月に、国務院が全国統一炭素排出権取引制度を導入すると公表してから6年、2017年に、国務院が「全国炭素排出量取引市場建設計画」を発表し全国統一炭素排出権取引市場の建設を宣言してから4年、という年月が経った。全国排出権取引市場は、まず発電部門の2,163社を対象としているが、今後、石油化学工業、化学工業、建材(セメントを含む)、鉄鋼、非鉄金属、製紙、電力、航空などCO2排出量が多い主要産業に拡大する予定。

【中国人民銀行】中国グリーン金融基準の第一弾を発表
 中国人民銀行は、このほど中国グリーン金融基準の第一弾を発表した。 「金融機関の環境情報開示ガイドライン」と「環境エクイティ融資ツール」(環境権益融資工具)という2つの業界基準が含まれている。「金融機関の環境情報開示に関するガイドライン」と「環境エクイティ融資ツール」は、国家金融標準化専門委員会が管理している。金融機関の環境情報開示業務を指導・規制し、環境エクイティ融資商品を創出・促進するための強力な基準となる。
 「金融機関の環境情報の開示に関するガイダンス」は、金融機関による環境情報の開示を規制し、より精密にグリーン・低炭素分野への資金の配分を誘導し、金融機関やステークホルダーが環境関連の財務リスクの特定、定量化、管理を支援し、中国の経済・社会の低炭素化を支援することを目的とする。 対象となる金融機関は、商業銀行、保険会社、資本管理会社、信託会社である。「環境エクイティ融資ツール」は、環境エクイティ融資ツールの分類、実施主体、融資対象、価値評価、リスクコントロールに関する要求事項を規定し、環境エクイティの買い取り、貸し出し、債権・質権付き融資を含む3つの代表的な環境エクイティ融資ツールの実施プロセスを定め、企業や金融機関が環境エクイティ融資活動を行う際に標準化の指針となり、炭素排出ピークアウトとカーボンニュートラルの目標達成に貢献するものと位置付けられる。
 6省(9箇所)のグリーン金融改革・イノベーションパイロット地区では、「金融機関の環境情報開示ガイドライン」を試行しており、一部のパイロット地域では、所管の金融機関の環境情報の全面開示を実現した。7月中旬から下旬にかけて、広東省、香港・マカオ・グレーターベイエリア、貴州省、重慶市は、金融機関の環境情報開示の進捗状況を発表した。7月14日には、中国人民銀行深セン支店の指導のもと、興業銀行深セン支店は業界で初めて「環境情報開示報告書2020」を発表した。
2021-08-17 中国銀行保険報 http://www.jxyuging.com/fzdt/driving/2021/0817/127799.html
 コメント:「金融機関の環境情報開示ガイドライン」は、グリーン金融の発展においてマイルストンのような位置づけである。現段階は、情報開示が強制ではなく、推奨としているが、今後、徐々に義務化に向かっていくだろう。開示内容について、現在は、環境関連のガバナンス体制、政策と戦略、リスクと機会、投融資活動の環境への影響、グリーン金融イノベーションなどについて、定性的・定量的な情報となっているが、今後開示内容をさらに整備し、気候変動、生物多様性など持続的可能性に関連する情報が含まれるだろう。


2.今月のニュース
(1)中央政府
【中共中央政治局】2030年に炭素排出ピークアウトを迎えるための行動計画を早急に策定
 中国共産党中央委員会政治局が7月30日に開催した会議で、カーボンピークとカーボンニュートラルを協調して秩序よく達成し、2030年までにピークアウトを達成するための行動計画を早急に策定し、国家戦略を遵守し、単なるキャンペーン方式の「炭素削減」を是正し、「二高」(エネルギー多消費、炭素多排出)プロジェクトの無秩序な開発を断固として抑制しなければならないとした。
2021-07-30 新華社 https://baijiahao.baidu.com/s?id=1706698547291071387&wfr=spider&for=pc

【生態環境部】炭素排出環境アセスメントを試行
 生態環境部は、このほど「重点産業における建設プロジェクトの炭素排出環境アセスメントの試行に関する通知」を公表した。河北省、吉林省、浙江省、山東省、広東省、重慶市、陝西省の7省において、電力、鉄鋼、建築材料、非鉄金属、石油化学、化学などの重点産業を対象に、炭素排出環境アセスメントの試行を行うと決定した。
 通知では、2021年12月末までに、建設プロジェクト炭素排出量の計上方法や環境アセスメント報告書の作成規範を策定し、重点産業の建設プロジェクト炭素排出環境アセスメントの作業メカニズムを基本的に確立。2022年6月末までに、重点産業の炭素排出水準及び削減の可能性を明らかにし、建設プロジェクトの汚染物質排出と炭素排出を同時に管理・抑制の評価の技術と手法を検討、との目標を掲げている。カーボンニュートラルアクションプランを作成するにあたって、確実に排出状況を把握し、対策を検討する狙いである。
2021-08-09 証券日報 https://baijiahao.baidu.com/s?id=1707300860209379908&wfr=spider&for=pc

【中国人民銀行】高いエネルギー消費・高い炭素排出のプロジェクトへの融資規模を厳格にコントロール
 8月9日、「2021年第2四半期における中国の金融政策の実施に関する報告書」が発表された。同報告書は、効率的に実体経済への金融支援を実施するためのメカニズムを構築すると強調した。カーボンニュートラル金融債の管理システムを改善し、厳格且つ標準化された方法でカーボンニュートラル金融債の開発を促進する。高エネルギー・高い炭素排出プロジェクトへの融資規模を厳格にコントロールし、「二高」プロジェクトのグリーン化と高度化を促進すると表明した。
2021-08-11 中国人民銀行HP http://m.tanpaifang.com/article/79037.html

【中国気象局】異常気象や気候変動のリスクがさらに高まる
 8月4日、中国気象局の8月定例会議において、「中国気候変動白書(2021年)」(以下では青書と省略)が発表された。青書によると、地球温暖化の傾向は依然として続いており、異常気象や気候変動のリスクはさらに高まっていることがわかった。
 白書によると、「中国は世界の気候変動の影響を受けやすい地域であり、同時期の世界平均を大幅に上回る温暖化率を示している。1951年から2020年までの間、中国の年平均表面温度は大幅な上昇傾向を示し、0.26℃/10年の温暖化率を示している」という。
2021-08-05 科技日報  http://finance.people.com.cn/n1/2021/0805/c1004-32181923.html

【国家発展改革委員会国家エネルギー局】新しいエネルギースポット市場に進出
 最近、国家発展改革委員会と国家エネルギー局は、「電力スポット市場構築モデル事業の促進に関する通知」を公表した。「再エネプロジェクトの当期予測発電量の10%を市場取引で行うように誘導し、市場で取引される電力量は全ライフサイクルの買取保証時間数にカウントしなくてもよい」と記述された。再エネのスポット市場への導入が政府によって明確にされたのは初めてである。
2021-08-04 中国電力企業管理  https://power.in-en.com/html/power-2393888.shtml


(2)地方政府
【湖州市】国内初の竹林炭素削減量保証ローンを獲得
 安吉農商銀行報福出張所は、7月30日、ある林業農場を対象とした全国初の竹林炭削減量保証(Pledge)ローン事業を成功させた。金額は37万元となる。この事業では、竹林の年間吸収量増加による二酸化炭素削減量保証融資モデルを革新的に採用しており、事業者が契約した1,000ムー(1ムーは約約666.7平方メートル)以上の竹林から発生する二酸化炭素排出量削減量の合計を保証し、国内の二酸化炭素排出量取引市場の二酸化炭素排出量取引価格を参照し、中国人民銀行信用情報センターの動産融資統一登録・公開システムを通じて誓約の登録・公開を行っている。
 初の竹林炭素吸収保証ローンの実行は生態的価値機能の有用な探求方策であり、「カーボンニュートラル」を支援するカーボンファイナンスの革新的な実践でもある。
2021-08-04 九派教育  https://www.163.com/dy/article/GGJ92I5D0552D8C2.html

【海南省】炭素排出環境アセスメントを試験的に実施、主要工業団地や基幹産業などの試験地域を対象に実施
 海南省の生態環境局は、「炭素排出量の環境影響評価の試行実施に関する通知」を公表し、一部の重点地域、重点工業団地、重点産業(電力、建築材料、石油化学、化学、製紙、製薬、石油・ガス採掘など)、重点プロジェクトにおいて、炭素排出環境アセスメントを試験的に実施することを明記した。
 炭素排出量の調査・評価は、既存の計画の実施について実施し、炭素排出環境アセスメント指標を特定・決定し、計画実施後の炭素排出量を予測し、炭素排出量削減の最適化・調整案と管理策・措置を提案することが求められている。
2021-08-06 海南省生態環境庁 https://www.hainan.gov

【寧夏】「クリーンエネルギー産業の高品質な発展を支援するためのグリーン金融業務に関する実施意見」を発表
 7月28日、寧夏自治区の地方金融監督局、発展改革委員会、工信部(工業情報化省)、中国人民銀行銀川中心支行、寧夏銀行保険監督管理局は、共同で「クリーンエネルギー産業の高品質な発展を支援するグリーン金融に関する実施意見」を発表した。
 各種金融機関がグリーン保険、グリーンクレジット、グリーンボンド、グリーン投資ファンドなどの様々な金融ツールを通じて企業の資金調達ルートを拡大することを奨励し、市場の活力を刺激し、産業リスクの保護レベルを向上させ、企業の資金需要をさらに満たし、質の高い産業発展を実現する狙いである。
2021-08-02 上海証券報  https://www.163.com/dy/article/GGD512TT0534S548.html


(3)業界・金融機関
【北京グリーン取引所株式会社】北京が国家CCER登録システムを構築し、国家任意炭素取引センターを設立
 8月6日、北京グリーン取引所株式会社は、「全国温室効果ガス自主排出削減登録システム構築」を公募した。入札条件と予算金額(908万7300ドル)を発表した。全国温室効果ガス自主排出削減登録システム」の開発・構築は全国自主排出削減炭素取引を行うための基盤であり、全国自主排出削減(CCER)市場は炭素市場のより完全なシステムの着地を加速させることが期待される。風力や太陽光など再生可能エネルギーのCCERプロジェクトの開発認証が再開される見込みである。
2021-08-10 能源汇  https://xw.qq.com/cmsid/20210810A03GA500?f=newdc

【深セン証券取引所】グリーン金融指数を発表
 8月2日、深セン証券取引所子会社である深セン証券情報有限公司は深セン福田区政府と共同で、国証香蜜湖グリーン金融インデックス(略称:Green Finance、インデックスコード:980052)を発表した。これは国内初のグリーン金融株価インデックスである。
 本インデックスは、深セン証券取引所および香港証券取引所に上場したグリーン金融事業を行っている企業を対象とし、グリーン金融スコアと総時価総額に基づいて50社を選定し、指標サンプルとしている。 銀行、総合金融、産業サービス、基礎素材などの分野をカバーする深センA株24銘柄と香港株26銘柄を対象としており、中国平安、招商銀行、国信証券、アクアウォーターなどの有名企業も含まれる。
2021-08-03 上海証券報 https://news.cnstock.com/news,yw-202108-4735784.htm

【威海市など】各地でブルーカーボン取引の仕組みの模索を加速
 8月10日、威海市で中国初の「海洋炭素シンクローン」が実行された。威海市の栄城農商銀行が、威海長慶海洋科技有限公司に2,000万元の「海洋炭素シンクローン」を供与した。10万ムーの国家海洋牧場実証モデル区を建設し、年間約42.5万トンの炭素を吸収することができるという。2021年4月、山東省威海市は、国内初の「威海ブルーカーボン経済発展行動計画(2021-2025)」を発表し、2025年末までに威海市の海洋経済に占めるブルーカーボン経済の割合を30%以上にすることを計画した。
 中国生態環境部海洋生態環境局副局長の張志鋒は、6月の記者会見で、生態環境部は海洋炭素吸収源の構築を重視し、海洋・沿岸域の生態保護・修復と気候変動への適応の相乗効果、監視システムの統合の推進、海洋炭素吸収源の監視・評価の実施などの重要課題を積極的に推進していると表明。
2021-8-26 中国青年報 https://baijiahao.baidu.com/s?id=1709167011361961147&wfr=spider&for=pc

【天津市大学・銀行】カーボンニュートラル・グリーン金融研究センター設立
 8月12日、「天津市カーボンニュートラル・グリーン金融研究センター」設立式典が天津建設研究所で行われた。天津建設研究所、天津排出権取引所、天津大学、南開大学、建設銀行天津支店が共同で立ち上げた。
 同センターは、カーボンニュートラルとグリーン金融に焦点を当て、プラットフォーム機能を最大限に活用し、天津建設研究所のグリーン・低炭素のノウハウとコンサルティングサービスの優位性、天津排出権取引所のカーボンアセット開発と低炭素産業生態とグリーン金融資源の優位性、天津大学環境科学院の低炭素理論・技術研究の優位性、南開大学リサイクル低炭素センターのグリーン金融理論研究の優位性、CCB天津支店のグリーン金融とカーボンアセット金融商品の優位性を統合し、低炭素建築とグリーン金融分野のプロジェクト実践と研究を行う予定である。
2021-08-12 天津日報 http://epaper.tianjinwe.com/tjrb/html/2021-08/13/content_151_4884185.htm

【中国銀聯・上海環境エネルギー取引所】低炭素をテーマにした銀行カードを発行
 8月20日、上海環境エネルギー取引所と中国銀聯が上海で開催した「上海環境エネルギー取引所と中国銀聯の協力式典およびグリーン・低炭素銀行カードの発行」が成功裏に終った。
 グリーン・低炭素をテーマとした銀行カードには、法人版と個人版の2種類のカード商品がある。中国銀聯における法人と個人の取引データに基づいて、企業と個人の炭素排出削減量を計算し、中国銀聯グリーン・低炭素ポイントシステムを構築し、権利や特典を提供するという仕組みとなる。企業のカーボンニュートラルへの転換を支援し、インタラクティブなエンターテインメントとダイナミックな報酬メカニズムは、顧客がグリーンで低炭素な生活を実践するように導く狙いがある。
2021-8-21 上海市環境生態局HP https://sthj.sh.gov.cn

【中国銀行】「国連責任銀行原則」に署名
 8月26日、中国銀行は、国連の「責任ある銀行業務のための原則」に正式に署名し、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)のメンバーとなった。中国本土にはUNEP FIメンバーが17社あり、そのうち14社が銀行である。
 今年2月、中国銀行は「気候関連財務情報開示に関するタスクフォース」(TCFD)の支援組織に正式に加盟した。
2021-08-26 中国銀行HP https://www.boc.cn


3.王婷の視点
 ESG、持続的発展、グリーン金融は、中国でも最近の流行語である。

2020年9月22に習近平国家主席が国連大会で「2030年にCO2排出ピークアウト、2060年にカーボンニュートラルを実現する」との目標(中国では、「3060目標」という)を宣言したことが背景にある。
 西側先進国と比べ、中国ではESGやグリーン金融への取り組みは相対的に遅れていた。2012年、香港証券取引所が香港での上場企業に対して「環境、社会及び企業統治に向けたガイドライン」を公表したことをきっかけに、ESGの概念が徐々に中国にも導入されていった。2018年にA株がMSCI新興市場指数とMSCIグローバル指数に組み入れられたことで、中国企業がこれまで以上にESGを重視するようになり、金融機関も企業のESGに注目し、積極的に投融資に取り組むようになった。
 とはいえ、習近平政権は発足以来、環境保護重視の政策を強化してきたのも事実である。2015年に国務院が「生態文明体制改革総体方案」を発表し、その中で、グリーン金融が生態文明を実現するための重要な役割を果たすと位置づけた。同年に、中国人民銀行が「グリーン金融債券の発行に関する管理」を公表した。2016年からスタートした第13次5カ年計画において、「グリーン金融を発展させる」と明確に掲げられ、グリーン金融が政府の重要な政策目標となった。2016年8月31日「グリーン金融体系の構築に関する指導意見」の公表をきっかけに、2017年に「グリーン債券評価認証ガイドライン(暫定試行)」、2019年に「グリーン産業指導目録」、2021年に2015年版作成していた「グリーンボンド支援プロジェクト目録」改正など、グリーン金融関連の政策が相次いで打ち出されたのである。
加えて、G20持続的金融研究グループ立ち上げの提案、欧州とのグリーン金融基準に関する共同検討、「一帯一路グリーン投資原則(GIP)」策定をリードするなど、国際協力や国際協調にも積極的関与している。
 グリーン発展を重視する政策が推進する中、ESG投融資やグリーン金融の発展スピードは速く、規模も年々増加しつつある。中国人民銀行が発表した2021年第2四半期末時点の国内外のグリーン融資残高は13.68兆元にのぼり、世界一の規模であるという。グリーンボンドについては、2020年末までに中国国内外で発行されているグリーンボンドの規模は1.4兆元で、世界一成長スピードの速い市場となっている。グリーンファンド分野においても、2021年2月までに中国証券投資基金業協会で登録しているグリーンファンドは804件といわれている。
 ESG投融資、グリーン金融が、「3060目標」の実現に大きく寄与すると期待されている。今後、この分野の動きがますます加速することは確実視されており、引き続き注目したい。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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