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JRIレビュー Vol.10, No.94

サステナビリティ人材を育成する

2021年09月08日 村上芽


サステナビリティ(持続可能性)を巡っては、SDGs(持続可能な開発目標)に17の目標があるように数多くの課題がある。課題解決の担い手の育成に向けて、学校教育においては、学習指導要領に「持続可能な社会の創り手の育成」が明記され、一定の前進成果が期待できるが、社会人・リーダー世代においても取り組みが必要である。本稿では、とくに社会人・リーダー世代を念頭に、サステナビリティに関する課題解決の担い手を「サステナビリティ人材」とし、その必要性、定義と企業による人材発掘・育成に向けた論点を提示する。

企業経営において、従来型の株主資本主義経済から、サステナビリティを重視した資本主義経済へのスムーズな移行に対応するための取り組みが必要とされている。新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験し、気候変動の影響を受けた甚大な自然災害に毎年遭遇するようになった今日、サステナビリティを重視する流れを無視する企業は時代遅れになる恐れがある。そこで、組織の人的資本全体を、社会のサステナビリティを重視した方向に変化させるべきである。

担い手となる「サステナビリティ人材」は、現世における人間の成功や成長だけを目指すのではなく、現在と将来の人間を含む地球という存在そのものの豊かさを目指して行動する。現在の人間の世界での経済的な成功ではなく、そこから飛び出して、より大きな生命の世界の担い手となるのがサステナビリティ人材である。サステナビリティ人材の定義として、「人間を自然界の一部と受け止め、地球環境と人間の関係を謙虚に理解する」「世代を超えた時間軸で自らや他者の利益を考えて生きていきたい」「自分とは異なる価値観や信条を持つ相手とのコミュニケーションを通じ、対立ではなく協調したい」という三つを挙げる。

潜在的なサステナビリティ人材を企業内で発掘し、育成するためのステップとして、「課題を知る・価値観に共感する」→「課題の構造を意識する」→「新たな発想・行動が生まれる」→「他者に広げる」を示す。また、参加者の考え方を引き出すための議題例や、組織としてサステナビリティを推進するための議題例を示す。

サステナビリティ人材を育成することで期待できる企業経営へのインパクトとして、性別や国籍などからは分からない考え方の多様性を引き出すきっかけになること、サステナビリティに関する組織内での世代間ギャップ解消に貢献し得ることがあげられる。

最後に、取り組みの成果を測るための指標の置き方について、サステナビリティ人材育成に関するロジックモデルを示す。育成プログラムの参加人数だけを実績・成果とはせずに、その参加者にどのような変化が起こり、それがさらにどのような変化を生み出しうるかを想定し、プログラムの成果としてどこまでを描きうるか、を事前に検討しておくことを推奨する。アウトカムレベルの指標としては、「社内ネットワークの豊かさ」「参加者の満足度・充足感」「離職率」などが考えられる。
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