コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.21,No.82

米中覇権競争下で韓米同盟に軸足を移す韓国ー注目したい半導体での協力

2021年08月16日 向山英彦


本稿では、今日までの韓国の対米・対中関係を振り返った後、近年の国際環境の変化と米中覇権競争に、韓国政府と企業がどう対応しているのかを明らかにし、今後の課題を検討する。

冷戦体制下、北朝鮮と対峙する韓国の安定はアメリカにとって極めて重要となった。朝鮮戦争(1950 ~ 53年)休戦後、アメリカは韓米相互防衛条約に基づき韓国に米軍を駐留させたほか、多額の援助を通じて経済復興を支えた。

その後、冷戦体制の終焉と貿易面での比重低下により、アメリカの重要性が相対的に低下していった。2000年代に入り、経済・安全保障の両面で中国の重要性が高まり、韓国政府は中国を重視した外交を展開していくが、次第に対米・対中関係の均衡に苦慮するようになった。

朴槿恵(パク・クネ)前大統領も当初中国との関係強化を図ったが、北朝鮮のミサイル発射への対抗措置として、在韓米軍へのTHAAD(地上配備型迎撃ミサイル)配備を決定したことにより、関係が悪化した。中国は自国の安全保障を害するとの理由で、韓国に配備中止を迫るとともに、事実上の経済報復に乗り出した。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領(17年5月就任)にとっては、北朝鮮の核開発問題の解決と対中関係の改善が外交課題になった。しかし、対北朝鮮政策や対中経済制裁をめぐってアメリカとの関係がぎくしゃくし、中国との関係改善も進まなかった。また、中国のけん制により、「戦略的曖昧性」といえる外交戦略をとるようになった。

21年1月、アメリカでバイデン大統領が誕生した。人権や規範を重視し、同盟関係の強化を図る方針を明らかにしたため、文在寅政権の対応が注目された。5月の韓米首脳会談で韓米同盟の意義を再確認し、安全保障を超えた広い分野で協力することに合意するなど、良好なスタートになった。

首脳会談でのもう一つの注目は、韓国の4大財閥が投資計画を発表し、バイデン政権の経済政策への協力を示したことであった。半導体分野ではサムスングループが工場の新設計画を発表した。すでにTSMC(台湾)とインテル(アメリカ)が工場建設を表明しているので、アメリカの半導体生産能力が大幅に増強されることになる。

総じて、文在寅政権は外交の軸足を韓米同盟に移したといえるが、中国のけん制も続くため、今後米中覇権競争が激しさを増すなかで明確な姿勢を示せるかは不確実である。他方、中国企業を顧客にもつ韓国企業にとっては、バイデン政権の対中政策を見極めつつ、中国企業との取引や中国事業を進めることが求められる。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ