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リサーチ・フォーカス No.2021-021

コロナ・ショックを受けたMMF改革の方向性 ~ 懸念される邦銀の外貨調達への影響 ~

2021年08月04日 谷口栄治


本年6月、主要国の金融当局から構成される金融安定理事会(Financial Stability Board, FSB)は、MMF(Money Market Fund)に関する規制強化策をまとめた報告書を公表。これは、2020 年3月に新型コロナウイルスの感染拡大を受けて金融市場におけるボラティリティが急速に高まった際、米国の短期金融市場でリスク回避的な動きが急速に広がり、一部のMMF から資金が流出して大きな混乱が生じたことが背景。

FSB 報告書によれば、MMF には、金融市場にストレスが生じた際に、①投資家は手元資金を確保するために保有するMMF の償還を求める、②MMF は投資家からの償還要請に応えるために保有資産(CD、CP 等)の売却を余儀なくされる、③売りが急増することでCD、CP 価格が下落(同利回りが上昇)する、④MMF 価格の下落を受けて投資家はいち早く現金化しようとしてさらに償還が加速する、という脆弱性が存在。

FSB は、MMF の強靭性を向上させる観点から、MMF 価格の下落を見越して償還を急ぐ投資家の行動を抑制するため、①投資家への「償還費用の賦課」、②償還額の一部留保や資本バッファーの設定による「損失吸収力の向上」、③規制上の閾値と関係なく、償還費用の賦課や償還停止の発動を可能とする「閾値効果の軽減」といった政策オプションを提示。また、大口の償還請求による金融市場への影響を緩和するため、④投資可能資産を制限したり、一定の流動性資産の保持を義務付ける「流動性変換の抑制」を提言。

MMF に関する規制強化によって、短期金融市場の安定化につながることが期待される一方、投資妙味の低下により、MMF 市場の縮小につながる可能性あり。邦銀はこれまでドル調達構造の改善に努めており、金融システム上のリスクは低減しているものの、CP やCD は依然として貴重なドルの調達源であり、MMF 市場の縮小はドル調達コストの上昇や市場の不安定化等に繋がる恐れ。本邦金融機関や当局は、今後のMMF 改革の動向を注視するとともに、ドル調達構造の安定化に引き続き取り組むべき。


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