コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

会社情報

ニュースリリース

2021年07月15日

各位

株式会社日本総合研究所


EV電池の残存価値診断技術の試験実施について

~多種類のEV電池を短時間で診断
 中古EVおよび中古EV電池の循環市場形成と脱炭素化に貢献~




 株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 谷崎勝教、以下「日本総研」)は、BACEコンソーシアム(注1、以下「本コンソーシアム」)の2020年度の取り組みとして、EV電池の残存価値診断技術の試験(以下「本試験」)を中国国内において実施しました。本試験では、複数のメーカーによる各種EVの中古電池に対し、3種類の診断技術の適用可能性をそれぞれ評価し、各EV電池の残存価値を短時間で診断できることなどを確認しています。

■EV電池の循環市場の現状と課題
 EVは脱炭素の主役として2030年に向けて世界的に急速な市場拡大が期待されており、特に中国は、2018年に年間125万台、それまでの累積で500万台以上のEVが販売された世界最大の市場となっています。
 これに伴い、EV電池では、材料のCO2排出量やリサイクル材料使用の明記などを前提としたサプライチェーンの大変革が進み始めています。しかし、中国では、EVでの一次利用を終えた電池のほとんどは能力が80%程度を残したまま廃棄され、一部しか有効利用が進んでいないのが実態です。経済産業省の報告(注2)によれば、こうして中国で廃棄されるEV電池の能力は、2030年には年間最大60GW程度の電力供給能力に達することが想定されています。これは、現在の中国で稼働する原発48基を上回る、約60基分に相当するものです。
 この潜在能力が有効活用されないのは、中古EV電池の残存価値を正確に診断できないことが主な要因です。中古EV電池は新品とは異なり、一つ一つが様々な使用状況を経て品質に大きな違いが生じます。しかし、従来の汎用技術では測定に数時間を要し、最新の短時間診断技術では対象電池が限定され診断技術を使い分ける専門知識が必要となるなどの課題があります。さらに、EV電池は各EVに最適化されながら仕様が増え続け、さらに今後も全固体をはじめEV電池の種類自体が次々開発されることが予想されるなど、診断方法は一層複雑化する見込みです。
 一方でEV電池を評価するノウハウはメーカー毎に蓄積され、多種多様な種類に横断的に対応するための診断技術の使い分け方法やその適切な組み合わせ方法のノウハウは構築されていません。このため、中古市場における売買やリファービッシュ(モジュールとして組み合わせたり、部分補修したりして品質を向上させること)を行う際の適切な残存価値評価は普及しにくく、リセールバリューが確保されにくい構造となっていました。
 この傾向は中古EVも同様であり、EVのリセールバリューが低く抑えられてしまうことが、一般層のEV新車購入を踏み切りにくくしており、EV普及を遅らせる要因の一つとなっています。

■複数電池の診断試験の実施について
 本試験では、各種の電池に複数の診断技術を適用し、診断技術の電池への適用可能性を評価しました。多くのメーカーによる各種の電池に対し、適切な診断技術の組み合わせを評価するとともに、これらのデータと診断のモデルを蓄積しました。
 具体的には、中国で流通する三元系、リン酸鉄系の主要な電池の一部として22種類の電池に対して、ゴイク電池株式会社およびカウラ株式会社が開発した電池内部特性をモデル化する診断技術を含む3種の診断技術を用いて、体系的に電池種類に応じた診断試験を行いました。  
 (実施概要)
   実施場所  :中国広東省
   実施期間  :2021年2月24日~3月26日
   使用診断技術:ゴイク法、等価回路学習法、充放電法
   対象EV電池 :三元系、リン酸鉄系の電池を含む22種類
   実施主体  :BACEコンソーシアム

■成果と今後の見通し
 EV電池の残存価値を診断評価する場合、従来の充放電による診断技術では1回につき数時間を要しますが、本試験の診断技術を用いると数秒から数分という100分の1程度の時間に短縮できることが分かりました。また、診断技術ごとに適用できるEV電池、できないEV電池を分類することで、EV電池と診断技術を適切に組み合わせる基盤となるデータを得ました。
 今後は本試験をさらに発展させ、拡張し続ける電池を的確に診断する技術を加え、多数の診断技術を組み合わせることで、自動車メーカーの枠を超えた幅広い電池種類での診断技術の確立を目指します。従来は診断時間の長さから大規模な電池試験場が必要でしたが、短時間での診断技術が実用化することで小規模な整備工場などでもEVやEV電池の簡易な残存価値評価が可能になります。さらに、多数の整備工場などに配置された診断機器の情報収集を行ってEV電池の診断情報を集積、流通できるようすることで、対応可能な電池をさらに拡大し、幅広い地域、拠点での健全な循環市場形成に取り組みます。

■2021年度の本コンソーシアム活動について
 本試験の結果が中国の業界関係者から評価されたことから、本コンソーシアムは、中国における循環市場の形成と脱炭素化の事業化に向けて、2021年度の活動を6月から開始します。本コンソーシアムでは、複数の残存価値診断技術を持つ日本企業と、日中の電池メーカー、EVメーカーからリユース、リサイクル企業などバリューチェーンの関係者と連携し、緊密で信頼性が高いデータ連携を促すプラットフォームシステムを構築し、エコシステムを構築します。
 今年度は中国でのサービス実証試験と事業化検討、国内においても、車載電池の品質評価を中心にEVのリセールバリュー向上、EVの導入促進に資するプラットフォームとエコシステム構築を進めます。

(注1)BACEコンソーシアム(Battery Circular Ecosystemコンソーシアム)
 日本の先進診断技術開発および循環市場のエコシステムを形成する企業による事業検討のコンソ―シアムです。多数の先進診断技術を統合利用して、他に類のない診断機能を中核とした循環市場のエコシステム構築を目指します。これにより、①EVの中古売買時の品質明確化によるリセールバリュー向上、②リユース利用時の品質向上、高信頼化によるリユース電池の市場拡大、③中古販売、整備、解体、リユースなど分散するバリューチェーン関係者による電池流通情報の共通基盤の構築と信頼性向上、④電池のCO2排出量の算定、を行うことで電池の脱炭素価値を向上させる横断的なサービス事業を創出する診断プラットフォームの実現を図ります。
車載電池の循環利用モデルに関するコンソーシアムを設立
(ニュースリリース/2020年10月16日) https://www.jri.co.jp/company/release/2020/1016-1/


本コンソーシアムのメンバー
・カウラ株式会社
・ゴイク電池株式会社
・損害保険ジャパン株式会社
・長瀬産業株式会社
・株式会社日本総合研究所
・三井住友ファイナンス&リース株式会社
・横河ソリューションサービス株式会社
(五十音順)
以上7社の事業者のほか、複数の大手EV部品・材料メーカー等が参画しています。

(注2)令和元年度鉱物資源開発の推進のための探査等事業(鉱物資源基盤整備調査事業
(中国におけるEV電池リサイクルを通じたレアメタル確保に関する基礎調査)報告書


以上

■本件に関するお問い合わせ先
【報道関係者様】 広報部      山口    電話:080-7154-5017 
【一般のお客様】 創発戦略センター 木通、李  電話:090-6794-5498

 
会社情報
社長メッセージ

会社概要

事業内容

日本総研グループ
ニュースリリース

国内拠点

海外拠点
人材への取り組み
環境への取り組み
会社案内(PDF版)
メディア掲載・書籍
インターンシップ

会社情報に関する
お問い合わせ