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リサーチ・フォーカス No.2021-009

ワクチンパスポートで経済再始動を急ぐ海外諸国-わが国も導入に向けた検討・準備が必要

2021年05月18日 高坂晶子


新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないなか、集団免疫を獲得し感染を抑制する切り札としてワクチンに対する期待が高まっている。実際、ワクチン接種で先行する国では、行動制限の緩和や水際措置の軽減に向けた議論が始まっている。

こうした動きを加速するのがワクチンパスポートである。これは、PCR・抗原検査の陰性結果やワクチンの接種履歴など個人の健康・医療情報をデジタル化し、出入国時の基準・ルールと照合して可否を判定する無償のツールである。

ワクチンパスポートには人の活動や移動を再開する際のハードルを引き下げ、コロナで停滞した経済の活性化に寄与する効果が見込まれている。特に、現在各国が課している厳しい渡航規制の緩和に役立つことから、運輸・旅行・観光産業からの期待が大きい。

他方、以下のような問題もある。第1 に、健康上の理由や個人的信条からワクチン接種が難しい人々も一定数存在するなか、接種履歴の有無によって不公平や差別が生じる可能性がある。第2 に、健康・医療という極めて根源的な個人情報を他国の入管事務所や航空会社に委ねることへの抵抗感は根強い。第3 に、現状、ワクチンの活用方法に関する意見は割れており、ワクチンパスポートをめぐって社会的な対立・分断が深刻化する恐れがある。

現状、ワクチンパスポートには、担い手や機能が異なる複数のタイプが併存している。開発・普及を主導している担い手は、①国際的なNPO や航空分野の業界団体など民間組織、②EU に代表される広域組織、③各国政府や自治体、に大別される。今後、各タイプの間で利用者獲得競争が生じる一方で連携も進み、デジタル化された健康・医療情報による入国等の認証は広く普及する可能性が高い。

日本政府は、先行する諸外国に赴く日本人が不利益を被ることのないよう、海外渡航時に限ってワクチンパスポートを導入する方針を表明している。他方で、イスラエルやアメリカ・ニューヨーク州が行っているような、国内でレストラン・ジム等を利用したりイベントに参加する場合に、ワクチン接種履歴を確認する事態は想定していない。今後、わが国がワクチンパスポートを導入するに当たっては、他国の制度・仕様に合わせるだけでなく、国内の感染状況や利用範囲に関する世論等を踏まえた幅広い検討が望まれる。

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