コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.21,No.81

企業活動のグローバル化で変化する韓国の対日貿易-日本の比重が低下する一方、求心力が働く半導体

2021年05月12日 向山英彦


本稿の目的は、韓国の対外経済関係の変化を辿りながら、企業活動のグローバル化に伴いサプライチェーンが日韓の枠を超えている一方、半導体分野では韓国に強い求心力が働いていることを明らかにすることである。

冷戦の終焉に伴い、朴正煕(パク・チョンヒ)政権期に形成された韓米日「貿易トライアングル」構造が変容した後、2000年代に中国との関係が強まった。しかし、10年代に入ると、対中輸出依存度が頭打ちになる一方、対米輸出依存度が上昇に転じ、ベトナムとの関係が急拡大するなどの新しい動きがみられようになった。

こうした変化は韓国の主力輸出製品の貿易関係でも確認出来る。半導体は半導体ユーザーが集積する中国へ多く輸出されているが、近年はベトナムへの輸出が増加した。サムスン電子が中国での携帯電話(含むスマートフォン)の生産を縮小し、ベトナムでの生産を拡大したことによるものである。

スマートフォンには半導体のほかに、積層セラミックコンデンサ(MLCC)が多く搭載されているため、ベトナムでの生産拡大によってMLCCのサプライチェーンが変化している。サムスン電子の生産開始以降、日本から、続いて日本企業がMLCCを生産しているフィリピンからベトナムへの輸出が増えている。

このように、貿易面での日本の比重低下には企業活動のグローバル化が影響している。その一方、韓国の対日輸入上位品目に、半導体の製造に欠かせない製造装置や材料が含まれており、韓国にとって日本が重要な存在であるのも事実である。

日本の対韓輸出管理強化が浮き彫りにしたのが、コアとなる材料分野での韓国の対日依存である。韓国では日本の対韓輸出管理強化後、輸入先の多角化や国産化を推進している。サムスン電子は日系企業の第三国の工場からEUV(極端紫外線)向けのフォトレジストの調達を増やしたほか、国産フッ化水素の使用を開始した。

注目すべきは、半導体産業では韓国に強い求心力が働いていることである。中長期的に韓国の半導体産業の一段の発展が見込まれることに加えて、韓国での国産化と海外企業による現地生産の動きが、日本の素材企業の現地生産を促している。

企業活動のグローバル化により今後も韓国の対日貿易は縮小していく可能性があるが、アジアを含むグローバルレベルでの貿易は拡大していくであろう。したがって、両国の経済関係を複眼的にみていくことがより一層必要になっている。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ