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ビューポイント No.2021-001

マクロ経済スライド終了時期統一および基礎年金45 年加入案の評価と課題

2021年04月06日 西沢和彦


2020 年12 月、今後の年金改正の動向を占ううえで注目すべき試算が厚生労働省から公表された。本稿は、その概要を整理し、評価を試みたうえで、今後の議論に向け若干の総括を行った。

厚労省試算のポイントは大きく2つあり、1つは、給付の1階に相当する基礎年金と2階に相当する厚生年金のマクロ経済スライド終了時期の統一である。現在、マクロ経済スライドの終了時期は、厚生年金は2025 年度であるのに対し、基礎年金は2047 年度と見込まれている。終了時期が遅れるほど給付水準が低下するため、基礎年金の給付水準の落ち込みは著しくなり、将来の高齢者の貧困率上昇を招くなどとして憂慮されている。厚労省の試算に基づく将来像は、終了時期を2033 年度に統一、基礎年金の給付水準の落ち込みの程度を和らげようとするものであり、それ自体は誰も反対しない内容となっている。

もっとも、留意すべき点がある。まず、基礎年金の給付水準低下を心配する前に、マクロ経済スライドが2004 年の導入から今日までそうであったように今後も殆ど機能せず、給付水準が高止まりすることを心配すべきである。それは年金積立金枯渇を招き、急激かつ大幅な年金額カットにつながる。次に、基礎年金給付水準の底上げを図るとしても、支給開始年齢の引き上げなど他の方法と比較考量すべきであるし、基礎年金の財源の2分の1は国庫負担であるから具体的な財源確保策も必要である。終了時期統一の背景にあるルール変更も果たして合理的なものなのか要検証である。

もう1つは、基礎年金の加入期間の40 年から45 年への延長である。長寿化や就労期間の長期化に制度を合わせるのは重要な課題である。もっとも、この問題は一見するほど単純ではない。年金制度の被保険者は、月々定額16,610 円の国民年金保険料を支払う第1 号、厚生年金保険に加入する第2号、第2号の夫を持つ一定収入以下の妻である第3号のいずれかに分類されるが、45 年加入に延長しても第2号は増えない。被用者は一定の就労要件のもと69 歳まで厚生年金保険への加入義務が既にあるためである。45 年加入で増えるのは第1号と第3号である。そうして増えた第1号には相当数の保険料免除者も出るであろうし、第3号で居続けることが可能な期間の長期化には、第3号の仕組みに批判的な立場からは注文もつくであろう。
今後の議論に向けたポイントとして次の3つを指摘できる。(1)年金制度の抱える課題の再確認、および、課題解決のための多様な政策メニューの提示、(2)年金制度および制度改正に対する国民の理解促進と議論喚起のための工夫、および、(3)税との一体的な議論である。
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