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コロナ対策で見えた、日本の「専門的な知見に基づく政策運営体制」不足

2021年03月23日 井熊均


 1月8日から始まった第二回目の緊急事態宣言は、3月21日にようやく全国で解除されました。この1年間を振り返ると、検査体制整備、緊急事態宣言の発令・解除の意思決定、医療体制の再構築、ワクチン接種のための体制整備、法制度の整備など、多くの人が日本のコロナ対策が後手後手であったり、統一性に欠けていると感じたのではないでしょうか。その理由の一つとして挙げられているのが科学的な知見に基づく政策運営体制の不足です。有識者会議はありますが、専門的な知見が政策判断に適切かつ機敏に活かされているようには思えません。
 
 そう考えた時、さてこれは政府だけの問題なのだろうか、と考えてしまいました。日本には世界的に高い評価を受けている企業がたくさんありますが、産業界全体を見れば、ITを中心とした技術革新の波に乗り遅れ苦戦している面が多いことは否定できません。その理由も先進的な知見、特に技術的な知見に基づく戦略の立案・実行体制が不足しているからだと思うのです。
 
 「和を以て貴しとなす」、という価値観が今でも根強い日本の組織では、色々な意見を聴いて判断できる人が組織の長となる傾向が強くなります。そこでは専門的な人材は長に対して知見を提供する役割の一つになりがちで、専門的な知見も薄まらざるを得ません。近年のように技術革新が企業や国の成長に大きな影響を与える時代には、こうした体制では、戦略が後手に回る可能性が高くなります。
 
 1990年代から始まったITを軸とする技術革新の時代は当分の間続きます。日本が世界の先端の潮流から取り残されないようにするためには、専門的な知見が判断の軸となるような組織作りが不可欠だと思うのです。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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