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リサーチ・フォーカス No.2020-047

電子処方箋の導入に向けた課題 ―完全電子化を実現し医療サービスの質向上へ貢献を―

2021年03月22日 成瀬道紀


政府は2022 年夏を目途に電子処方箋を導入する方向で検討を進めている。本稿は、議論の現状を整理したのち、諸外国の事例を参照しつつ、課題を指摘した。

処方箋は、医薬分業の要となる書類である。医薬分業の進展で、処方箋の枚数はこの30 年間で約6 倍に増加した。このように数字上は分業が進んでいるものの、医療サービスの質向上という本来の目的が十分に達成されているとはいえない。電子処方箋の導入は、この点の改善にも資することが期待される。

政府が検討する電子処方箋では、①医師は電子カルテなどから処方情報を電子処方箋サーバーに登録、②患者は薬局にマイナンバーカードを提示、③薬剤師はサーバーから患者の処方情報を確認して調剤し調剤結果を登録、という流れとなる。紙がなくなり医療機関や薬局の業務が効率化するうえ、患者の薬歴の一元管理が容易となる。一方、課題としては、マイナンバーカードが普及していない点、既存の電子カルテには電子処方箋と連携する機能がない点、が指摘できる。

海外での導入事例も参考にすべきである。エストニアでは2010 年に電子処方箋を導入し一気に電子化を進めた。ほぼ全国民が国民IDカードを保有していたことが成功の背景にある。一方、国民ID制度のないイギリスではスキームに工夫を加えて電子化を進めたが、一部で紙が残るなど電子化のメリットの全ては享受できていない。わが国としては、マイナンバーカードを用いるエストニア型のスキームを目指すべきだが、そのためにはカードの普及が大前提となる。

以上を踏まえ、本稿は次の4点を提言する。第1に、医療サービスの質向上を明確な目標として掲げることである。第2に、薬歴の一元管理のためにも、ほぼ完全な電子化を目指すことである。第3に、マイナンバーカードの普及を急ぐことである。第4に、電子処方箋と連携する機能がある電子カルテなどの開発を促進することである。
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