要 旨 |
1. |
2008年におけるわが国の中国向け輸出は12.9兆円で、米国向け(14.2兆円)に次ぐ大きさである。中国の輸出が世界経済の悪化に伴い急減していることによって、わが国の中国向け輸出も影響を受けている。他方、中国では2008年11月に4兆元規模の景気刺激策が打ち出されたため、その効果がわが国の中国向け輸出に及ぶことが期待される。
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2. |
中国の輸出不振が長引けば、わが国の中国向け輸出には年間▲1兆5870億円の影響が生じるとみられる。内訳では電気機械及び電子部品・デバイスが▲5578億円と最も大きく、以下、鉄鋼・非鉄金属▲2512億円、化学▲2389億円などである。電気機械及び電子部品・デバイスへの影響が大きくなる理由は、中国の輸出製品に日本の電子部品などが多く組み込まれていることによる。
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3. |
一方、中国の景気刺激策で期待されるわが国の輸出増加は総額2兆508億円である。内訳は、一般機械4738億円、鉄鋼・非鉄金属4053億円、電気機械及び電子部品・デバイス3280億円、化学2159億円、情報通信機械1355億円などである。
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4. |
中国の景気刺激策で期待される輸出増加額は、中国の輸出不振の影響で減少するとみられる金額を4638億円上回る。ただし内訳をみると、一般機械や鉄鋼・非鉄金属などが差し引きプラスとなるのに対して、電気機械及び電子部品・デバイスについては、中国の景気刺激策によるプラス効果では中国の輸出不振の影響を補い切れない。
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5. |
関西は、米国向け輸出が少ないために、構成比で中国向け輸出が高めになるという特徴がある。中国の輸出不振が続けば、関西の輸出は▲4337億円の影響を受けるとみられる。一方、中国の景気刺激策によって期待される関西の輸出へのプラス効果は5376億円であり、マイナスの影響とプラス効果を総合すると、1039億円のプラス超過と見込まれる。 |
6. |
中部の中国向け輸出は、中国の輸出不振が続けば▲2490億円の影響を受けるとみられる。一方、中国の景気刺激策によって期待される中部の輸出増加は3522億円である。マイナスの影響とプラス効果を総合するとプラス超過額は1032億円で、関西とほぼ同程度である。
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7. |
関東の中国向け輸出は、中国の輸出不振が長引けば▲5695億円の影響を受けるとみられる。一方、中国の景気刺激策によって期待される関東の輸出増加は7301億円である。マイナスの影響とプラス効果を総合すると1606億円のプラス超過と試算され、関西や中部を上回る。
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8. |
中国向け輸出に関しては、中国の景気刺激策によるプラス効果が中国の輸出不振によるマイナスの影響を全体として上回るとみられるが、電気機械及び電子部品・デバイスではマイナスの影響が大きく、その回復は世界経済の持ち直しによって中国の輸出が増加に転じるかにかかっている。
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