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CSRを巡る動き:使途明示型資金調達の拡大、そして“成長痛”への対策

2021年03月01日 ESGリサーチセンター


 近年、ESG配慮やSDGs達成など持続可能な社会や地球の実現を掲げて、事業に取り組む企業が増えています。同時に、こうした取り組みに必要となる資金への需要も高まっています。従来、上場株式などを中心にESG配慮を意思決定に反映させる行動はESG投資と呼ばれてきましたが、近年、環境や社会における課題解決を目的として、あらかじめ資金使途やプロジェクトを定めて資金調達する手法や金融商品を包括して「サステナブルファイナンス」と呼ぶことも増えてきました。資金を調達する側の企業や組織にとってのメリットは、資金調達が持続可能な社会や地球の実現に貢献するためであると明言することで、世の中へのアピール効果を獲得できること、ESG投資に関心のある投資家など、幅広いステークホルダーの獲得に繋がることがあげられます。

 近年、使途明示型資金調達がブームとなった嚆矢は、2007年にEIB(欧州投資銀行)が発行したClimate Awareness Bondだと言われています。その後、資金調達で解決を目指す課題分野は、環境側面の「グリーン」から社会側面の「ソーシャル」、さらに環境と社会の両側面を対象とした「サステナブル」に拡がってきました。また、資金調達の手法も同様に、債券発行による「ボンド」から金融機関からの融資による「ローン」、そして最近ではワラント(新株予約権付ファイナンス)やIPO(新規株式上場)などの「エクイティファイナンス」も登場しています。その規模は、グリーンボンド(環境債)やサステナビリティ(持続可能性)に配慮した融資など環境配慮型債務に限っても、2019年の世界全体の実績額が4,650億ドル、累積額は2019年末時点で1兆1,700億ドルに上ったとされています。(Bloomberg New Energy Finance調べ)

 このように規模を拡大している使途明示型資金調達ですが、それとともに投資家や市場から「環境や社会課題の解決に本当に貢献しているのか」と疑問を投げかけられたり、批判を受けたりする事例も発生しています。まさに、使途明示型資金調達にとっての“成長痛”と言えるでしょう。このように、資金充当やその効果が疑われるような案件は、通称「ウォッシュ」と呼ばれています。環境および社会課題解決のための資金をひろく循環させるには、ウォッシュ案件を生まないように、発行体や金融機関がサステナブルファイナンスの意義を十分に理解したうえで、資金調達や充当に臨むべきです。

 そのためには、基本に立ち戻って、国際的に認知された原則類にしっかり基づき、検討を進めるべきでしょう。例えば、債券発行による資金調達の場合は、ICMA(国際資本市場協会)が策定した「グリーンボンド原則」や「ソーシャルボンド原則」が公開されています。「エクイティ」によるファイナンスには、登場したばかりで原則類は策定されていないものの、考え方は「グリーンボンド原則」や「ソーシャルボンド原則」と通底すると考えます。一方、「エクイティ」は、債券や融資に比べて調達した資金の流れを追跡することが難しいため、資金調達後に最低1年に1回のペースで定められている「レポーティング」が重要です。着実なレポーティングにより、資金充当や環境および社会課題解決の状況を開示することで、投資家や市場は「ウォッシュ」ではないことが確認でき、使途明示型資金調達への資金提供を拡大させることができます。その結果、持続可能な社会と地球の実現が、少しでも早まると期待できるのではないでしょうか。

本記事問い合わせ:新美 陽大
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