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国際戦略研究所 研究員レポート

【中国情勢月報】中国外交にとっての対米関係とミャンマー情勢

2021年02月12日 副理事長 高橋邦夫


この1カ月の中国外交の動きで、1月20日に発足した米国バイデン政権と中国はどのように渡り合おうとしているのか、また2月1日にミャンマーで起きたクーデタに中国がどのような対応を取っているかについて見ることにした。
いずれも、現在進行形で動いている話であり、断定的なことは言えないが、少なくとも現時点で状況をどう見るべきか、徐々に見えてきた今後の米中関係の見通しを中心に、私見を披露したい。

1.対米関係の特徴

(1)予想以上に早い米国側の展開

バイデン政権の発足以前から、米中は台湾・香港・南シナ海、またハイテク分野などで対立を続ける一方、気候変動を含む環境問題などでは協力する可能性があると一般的に言われてきており、現にそうした方向で状況は動いていると言える。但し、これまで筆者は、そうした動きが出てくるにしても、バイデン政権は国内の新型コロナ対策や欧州諸国との関係の再構築にまず集中し、アジア太平洋の問題着手にはなお時間を要するのではないか、と考えてきた。
しかし、現実には、現地時間1月5日に行われたジョージア州選出の上院議員決選票で2議席とも民主党が制し、議会の上下両院で民主党が多数を占めることになった(注:上院では、民主党も共和党も50議席となったが、賛否同数の場合には上院議長でもあるカマラ副大統領が1票を投じることにより、民主党が多数を占めることとなる)結果、当初遅れも心配されたバイデン政権の閣僚人事が順調に進むことが見込まれた(例えば現地時間1月26日に米上院はブリンケン国務長官の就任を承認)こともあってか、バイデン新政権は筆者の予想以上に早く、外交活動を始動している。特に、1月20日の大統領就任式典に台湾の在米代表である䔥美琴・駐米台北経済文化代表処処長が1979年の米台断交後初めて正式招待されたことは、裏には台湾側あるいは親台湾派の議員の働き掛けがあったことは想像できるが、何故わざわざ政権発足時に中国との摩擦の火種になりうることを行ったのであろうかと、筆者にとっては意外であった。
更に、ブリンケン国務長官始め、現地時間1月25日に承認されたイエレン財務長官などバイデン政権の閣僚が指名承認のための上院での公聴会で次々と中国の不公正な経済貿易政策などと対峙していく旨述べていることから、今後バイデン政権が本格始動した際には、中国との摩擦が増えていくことも十分予想される。
そうした新政権の対中政策の方向を明確に示したのが、現地時間2月4日にバイデン大統領自身が国務省に出向いて行った「America’s Place in the World」と題する外交演説である。この演説でバイデン大統領は、中国を「米国の繁栄・安全保障・民主的価値に直接挑戦する最も深刻な競争相手」と位置づけた。同時に、バイデン大統領は、「我々は、そうすることが米国の利益に適う場合には、北京と協力する用意がある」とも述べている。後者については、巷間広く言われているように気候変動問題などが思い浮かぶ。

(2)中国側の対応

中国側は発足したバイデン新政権とどう向き合おうとしているのであろうか。ここでは、昨年11月25日に習近平・国家主席が当選確実になったバイデン候補に送った祝電、世界経済フォーラム(「ダボス会議」)がオンラインで開催した「ダボス・アジェンダ」会議で習近平主席が1月25日に行った演説、王岐山・国家副主席と「第12回米中商工界代表及び元政府高官との対話会」(オンライン)出席者の対話(1月29日)、楊潔篪・政治局委員(兼党中央外事工作委員会弁公室主任)とブリンケン国務長官の電話会談(2月6日)、楊潔篪・政治局委員と米中関係全国委員会とのオンラインでの対話(2月2日)、更には累次の中国外交部関係者の発言などから伺える現時点での中国側の方針を見てみたい。

(現時点での中国の対米政策の基本方針)

まず、現在の中国当局の対米政策の基本方針は、昨年11月25日に習近平国家主席がバイデン候補に対して発出した祝電に示されているとされる。具体的には、1月28日の中国日報社主催オンラインセミナーで、楽玉成・外交部筆頭副部長が、右祝電にある「(中米)双方が、衝突せず・対抗せず、相互尊重、協力・ウィンウィンの精神に則って、協力に焦点を当て、相違点を管理・コントロールし、中米関係の健全で安定的な発展を推進し、各国及び国際社会と手を携えて世界の平和と発展という崇高な事業を推進していくことを希望する」というのが、中国の中米関係に対する主張であり期待である、と述べている。
このことから、中国側は、当面、習近平国家主席が2013年に国家主席就任後初めて訪米してカリフォルニア州サニーランドでオバマ大統領(当時)と会談した際に提起した「対米4原則」と言われる「衝突せず・対抗せず、相互尊重、協力・ウィンウィン」を対米政策の基本に据えていることがわかる。この「対米4原則」は、王岐山・国家副主席や楊潔篪・政治局委員もそれぞれ米側関係者との会談で言及している。…

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