コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.21,No.80

ASEAN地域で事業拡大をめざす現代自動車-EVシフトで新たな需要を取り込めるか(PDF:975KB)

2021年02月15日 向山英彦


2020年10月、鄭義宣(チョン・ウィソン)首席副会長が現代自動車グループ会長に就任した。同グループは2000年代に飛躍し販売台数で世界第5位になったが、近年業績不振に陥った。本稿では、不振脱却に向けて進める改革とASEAN(東南アジア諸国連合)地域で事業を拡大する狙いについて考察する。

現代自動車はコストパフォーマンスの良さを武器にアメリカ市場でシェアを上げるとともに、中国を含む新興国市場の需要を取り込んで、2000年代に販売台数を伸ばした。その躍進の礎を作ったのが、90年代半ば以降実施した品質改善と生産体制の改革(モジュール生産、プラットフォームの統合など)である。

しかし、17年以降中国で販売が急減するとともに、アメリカでも17年、18年に前年を下回るなど業績不振に陥った。中国での販売急減の要因は、韓国のTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備に対する中国当局の経済報復以外に、①外資系企業間の競争激化、②現代自動車のモデルチェンジの遅れ、③中国地場企業の低価格攻勢などがある。

18年に首席副会長に就任した鄭義宣は、アメリカ販売の立て直し、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への積極的対応、研究開発投資の拡大などを進めた。「現代自動車2025戦略」(19年末発表)で、スマートモビリティデバイスの製造とスマートモビリティサービスの提供を今後の事業の柱にする計画を示した。

19年に入りアメリカでの販売が復調するとともに、欧州を中心にEV(電気自動車)の販売が増加するなど、改革の成果が表れ始めた一方、中国では販売不振が続いている。「現代自動車2025戦略」において、電動化によるポジショニングの上昇と記されていることから、今後EVシフトを進めて中国事業の再生をめざす計画である。

近年世界的に温暖化ガス排出削減への取り組みが強化されており、主要国でガソリン車の販売を規制し、EVシフトを進める動きが加速し始めた。現在、世界のEV市場の半分を占める中国では、それを通じて自動車製造強国をめざしている。他方、ASEAN地域でも大気汚染が深刻になり、タイやインドネシアではEVシフトを始めた。

現代自動車がASEAN地域で事業を拡大しているのは、市場の拡大が見込めるほかに、EVシフトの流れに乗って新たな需要を取り込む狙いがある。タイやインドネシアなどでは日系企業が圧倒的に高いシェアを占めているため、EVのSUVやタクシー、トラックなどの分野で販売を伸ばす戦略をとる可能性が高い。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ