2009年02月27日 |
「内憂外患」のユーロ圏景気 ~後退圧力の一巡は2011年以降に~ |
< 要 約 > |
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1. | ユーロ圏では、米国発の金融危機が欧州各地へ飛び火するなか、景気後退が深刻化。 もっとも、景気後退の本質的要因は、主要4ヵ国(ドイツ・フランス・イタリア・スペイン)がそれぞれ特定の需要項目に偏った「アンバランスな成長」を続け、2008年入り前後からその成長基盤の脆さを露呈させたことにある。 4ヵ国の成長パターンは、次の2種類に大別。 (イ)住宅バブルのもとで、家計支出の牽引力に依存してきたスペイン・フランス
(ロ) 世界景気の拡大を追い風に、輸出の増加に支えられてきたドイツ・イタリア |
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2. | ユーロ圏の景気悪化の深刻度および今後の調整メドについて、主要4ヵ国の「メイン
エンジン」に焦点を絞って検討すれば、以下の通り。
1)スペインの住宅市場 … 試算によれば、2008年10~12月期時点の住宅価格は、適正水準からなお3割近く上振れ。その解消には、今後の所得減税の追加実施を見込んでも2011年半ばごろまでかかる可能性が大きく、その間、個人消費は逆資産効果により一段と減勢を強めていく公算。
一方、バブル期に積み上がった「過剰住宅投資」の調整を2011年までに完了させるには、実質住宅投資が一旦2008年から2割低い水準まで減少することに。 2)フランスの住宅市場 … 足元の住宅価格は適正水準からなお3割近く上振れているとみられ、2010年中の割高感解消は難しい情勢。住宅価格に対する個人消費の感応度はスペインに比べマイルドであるものの、個人消費伸び率は2010年にかけマイナス圏で推移する可能性大。 3)ドイツの輸出 … 先進国景気の著しい悪化、新興国景気の減速が見込まれるなか、2009年の実質輸出は2ケタ減となる公算。2010年のプラス転化も期待薄。 さらに、ポーランドやロシアなどの周辺新興国で対外資金フローの逆流が一段と加速し、経済活動が停滞する事態となれば、ドイツの輸出にも深刻なダメージが及ぶことに。 4)イタリアの輸出 … 輸出先上位5ヵ国(ドイツ・フランス・スペイン・英国・米国)の景気に連動するとの経験則に照らせば、ドイツと同様、2009年の実質輸出は2ケタ減となり、2010年も減少に歯止めがかからない見通し。 |
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3. | 各国財政・金融当局の政策対応に大きな期待を寄せることも困難。
(イ)ドイツ・イタリアが財政出動しても、経済のメインエンジン(外需)の本質的な回復につながらない可能性大。
(ロ)国債需給の悪化懸念が強まるもとで、今後の財政出動が、長期金利の上昇を通じてかえって需要を抑制するリスクも。 |
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4. | 以上のように、主要4ヵ国が「内憂外患」の状況を抜け出せず、政策効果にも多くを期待できないなか、2010年中のユーロ圏景気の持ち直しを見通すことは困難。 2009年の実質成長率は、「輸出依存型」のドイツ・イタリアを中心に▲4%近辺まで落ち込む見通し。 2010年は、ドイツ・イタリアのマイナス幅が年後半に向け幾分縮小する一方、フランス・スペインの景気調整ペースが持続するため、ユーロ圏全体・通年で▲1%超のマイナスになると予想。 | |
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