2009年02月20日 |
公共投資の意義を問いなおす 雇用・景気対策としての有効性を高めるために |
要 約 |
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1. | 景気・雇用対策として公共投資を期待する声が高まっている。昨年打ち出された一連の経済対策においても公共投資に繋がる対策が盛り込まれている。もっとも、わが国では「公共投資悪玉論」が根強く、その効果を疑問視する声も大きい。そこで本レポートでは、公共投資に対する批判(a.景気押し上げ効果はない、b.成長力強化や生活向上などの便益に繋がらない、c.財政健全化の道筋に悪影響が及ぶ)の妥当性を改めて検討する。結論的にいえば、公共投資に対する批判は必ずしも妥当性はなく、そのやり方次第では効果は見込めると考えられる。重要なことは、経済成長力の強化や国民生活の向上に役立つ公共投資を行なうことである。 | |
2. | 批判a.「景気の押し上げ効果はない」に対する評価 景気押し上げ効果は低下しているものの、効果が全くなかったとするのは言い過ぎ。90年代の経済対策において、仮に公共投資が追加されていなければ、当時の雇用情勢がさらに悪化していた可能性を否定できない。 |
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3. | 批判b.「成長力強化や生活向上などの便益に繋がらない」に対する評価 こうした懸念は既存の投資配分を前提にしたもの。公共投資の配分を見直すことで、便益性の高い社会資本が整備されることは可能であろう。さらには、公共投資の対象となる社会資本の範囲として、いわゆる「ハコモノ」にとらわれることなく「ソフト」の資産を含めることで、政府支出全体の構造を見直すことも必要である。 |
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4. | 批判c.「財政健全化の道筋に悪影響が及ぶ」に対する評価 景気後退が深刻化・長期化することによる税収への悪影響を考慮することも必要。さらに、公共投資が呼び水となって、将来、景気が回復に転じれば、前回の景気拡大局面でもみられたように法人税を中心に税収の急回復も期待できる。このように考えると、公共投資によって景気を下支えすることは、財政健全化の観点からみても必ずしも的外れとはいえない。 | |
5. | 現在の公共投資の規模をみると、90年代後半に比べて大幅に縮小しており、公共投資を増やすにあたって規模の面からの制約は弱まっているといえよう。 | |
6. | 公共投資を行なうことの意義の一つは、不況期に発生する遊休設備や資源、失業者を社会資本整備などの事業に活用できること。現在の厳しい景気状況を踏まえると、投資対象を適切に選べば、公共投資の拡大は適切な方針と考えられる。公共投資は政府が発注者となって直に仕事を作り出すことから、減税など他の政策に比べて迅速に雇用増加の効果が現れると考えられる。さらに、政府が成長戦略などの将来ビジョンとともに、その実現に向けた社会資本整備の方向性を示すことで、民間部門の成長期待を高めることも可能となろう。 | |
7. | 国においては、わが国の国際競争力を高めるような社会資本ストックの整備に徹することが重要。将来の経済成長や生活向上には、建物や機械設備などの有形資産の整備だけでなく、技術や知識などの無形資産の蓄積も重要と考えられる。社会資本の概念を無形資産にも広げて、配分の重点をシフトしていくことが重要となろう。 | |
8. | 地方においては、地域経済の活性化や地域住民の生活の向上に向けた取り組みが求められる。直轄事業や補助事業のように財源を国と地方が互いに負担し合う構造の弊害として、地方主体の公共投資に地域の事情が十分に反映され難くなるとの問題が指摘されており、地方自治体などから見直しを求める声が大きい。直轄事業負担金、補助金については、縮小・廃止の方向で見直すことが望ましい。補助金の縮小・廃止に併せて、財源を一般財源として地方に移譲することが求められる。 | |
<目次> | ||
1.公共投資批判の再検討 2.公共投資の意義 3.改革の方向性 |