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JRIレビュー Vol.11,No.83

過疎地域における高齢者向け生活支援の課題ー互助からソーシャルビジネスへ

2020年11月04日 星貴子


わが国は人口の約3割が高齢者という超高齢社会であるが、その様相は全国一様ではない。都市部が、高齢者人口の増加に伴い高齢化率が上昇する人口集積地型高齢化である一方、地方部、とりわけ過疎地では高齢者以上に他の年代の人口が減少するため、相対的に高齢化率が上昇する過疎型高齢化となっている。過疎型高齢化地域では、民間事業者の撤退により買い物や移動といった日常生活に不可欠なサービスの利用が困難となっているだけでなく、自治会や町内会などの地縁団体の脆弱化により、声かけや見守りなどの高齢者支援が難しくなっている。2040年には、2割の自治体でこうした状況に陥る恐れがある。

こうしたなか、民間企業や過疎地域の住民組織が、新たな形で生活支援サービスを提供する動きが出てきた。民間企業では、主に物流事業者や流通事業者が、本業を通じた社会貢献として、高齢者の見守り・安否確認や買い物支援を提供している。一方、住民組織では、京都府南丹市美山町鶴ケ岡地区、高知県四万十市西土佐大宮地区、岡山県笠岡市笠岡諸島など、地域運営組織や自治体との連携の下、地域住民自らが設立した法人組織が、コミュニティビジネスとして生活支援事業を手掛けるケースがある。

上記ビジネスの特徴として、本業で培ったノウハウやネットワークの活用、地域住民のビジネス化への理解と自発的参画、収益事業の多角化が挙げられる。これらは、過疎地で高齢者向け生活支援サービスを、持続的に提供するための重要なポイントとなる。

しかし、今後も人口減少および高齢化が不可避であることから、人材不足や需要の減少といった過疎地域ゆえの課題が残存する。そのため、当面はソーシャルビジネスやコミュニティビジネスによって生活支援サービスの提供が可能であったとしても、ビジネスのポイントである地域住民の自発的参画や事業の多角化には限界があり、中長期的には、サービスの提供を持続することが困難になることも懸念される。

こうした事態を回避するためには、国や地方自治体は、ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスを公助や互助に代わる重要な担い手として位置づけ、人材確保のための体制整備、補助金等の拡充、税制の見直し、規制緩和など事業環境を整備することが重要となる。加えて、人口減少社会における持続可能な高齢者支援体制の在り方を改めて問い直し、実態を踏まえた将来ビジョンを早急に示すことも求められる。

当該ビジネスを担う民間事業者も、シェアリングエコノミーやICT・ロボティクスなどの先端技術を積極的に取り入れるなど、サービスの維持に向け、事業の効率化や生産性の向上に取り組むことが不可欠である。
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