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日本総研ニュースレター 2020年7月号

コロナ後に加速する製造業 DX の3つのポイント

2020年07月01日 木通秀樹


コロナ後に期待される企業変革力
 ものづくり基盤技術における政府の振興策をまとめた「令和元年度 ものづくり基盤技術の振興施策」(以下「白書」)が5月29日に閣議決定された。白書では、新型コロナ感染症のほか、気候変動、国際的な政治不安等による急速な環境変化に対応するため、製造業はデジタル・トランスフォーメーション( DX )を推進し、企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)を強化すべきとの方針が示された。また、企業変革力の発揮には、①脅威や危機を『感知』し、②既存の資産・知識・技術等の『リソースの再構成と機会の捕捉』により競争力を獲得し、③競争力を持続的なものにするために組織全体の『変容』(トランスフォーメーション)が必要としている 。
 10年かかるとされてきたDXの本格普及までの期間は、新型コロナ感染症によって2、3年に短縮される見通しとなり、モノづくり企業は本格的な変容を迫られることになる。白書でも、レガシーシステムや人材などの問題が挙げられているが、ここではより直接的な課題解決のポイントを、企業変革力の3つの能力の視点で提示したい。

企業変革力①『感知』
 脅威や危機を感知する際、従来は断片的な情報から傾向を分析し、状況判断することが多かったが、DX技術の向上で、「連続的」データの「多面的」な分析が可能となった。そこで、連続的なデータを多面的に分析して市場や企業の変化を正確に捉え、各種の因果関係を把握するという、感知能力が格段に高いモデルが開発されるようになった。
 エネルギーの利用状況を時系列で分析し、工場や工事現場、オフィスなど様々な場所の健全性や柔軟性などをモニタリングする技術などはその代表例だ。

企業変革力②『リソースの再構成と機会の捕捉』
 白書では企業の既存資産の再構成が重視されているが、DXの進展によって、従来のエコシステムだけでなく、従来は価値が認められてこなかった有形無形の潜在的な社会リソースを取り込むことが重要になっている。
 例えば、Uberは評価システムによって一般ドライバーの信頼という見えないリソースを掘り起こし、 さらにマッチングシステムによって家で眠っている自家用車というリソースを掘り起こして新たな市場を創出した。潜在的な社会リソースには、人の思いや行動、技術、時空間などの無形なものもあり、コロナ禍では市民の団結力などとしても顕在化した。このようにDXでは、自社のリソースだけでなく、潜在的な社会リソースを掘り起こして付加価値を付けることが重要だ。

企業変革力③『変容』
 白書では、DXによる商品開発とサプライチェーン、さらに保守・サービスなどを含む長いチェーンの高度な連携を求めている。しかし、環境や市場変化に適切に対応するには、チェーンの効率化のほか、仕組み自体の変容が欠かせない。チェーンの大きい企業は大きな事業にならないと参入しにくいが、市場の小さな変化に敏感に反応し、小さくニッチな市場に参入できる仕組みとすることが必要だ。
 DX初期に急成長したのは、Uber、Airbnb、メルカリなどのリユース市場だった。しかし今後は、多様でニッチなニー ズに応える、安価で多品種少量生産できるモノづくり技術の台頭が予想される。この2、3年で急速に進化した部品のインテリジェント化による製品構築の容易化と、3Dプリンターなどの加工技術の低コスト化が、この変革の原動力だ。技術の進化が、拡大するニッチニーズと呼応して、リユースから小規模モノづくりにシームレスに市場は変化していく。

DXが製造業のサステナビリティを向上
 新型コロナ感染症の影響で、DXによる変革は加速された。モノづくり企業には、既存事業の効率改善に留まらず、拡大するニッチ需要とニッチ商品・サービスを結びつける多様な市場への参入が避けられなくなる。
 今後、企業のサステナビリティ評価には、社会や環境の持続可能性への貢献だけでなく、社会や環境の大転換、資本主義の大転換のなかでの柔軟な対応力も含まれていくだろう。DXはそうした時代に不可欠な、企業変革力およびサステナビリティを向上させるツールとなる。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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