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米大統領選と世界経済の舵取り
2020年10月27日 井熊均
11月3日に行われるアメリカの大統領選挙の行方に世界中が注目しています。良くも悪くも、この4年間で世界中の人が自由主義陣営の盟主であるアメリカが根深い問題を内包していることを理解しました。アメリカの国外では米中の対立が注目されていますが、アメリカが内包する問題はそれと同じかそれ以上に深刻と考えるべきなのかもしれません。
自由主義陣営が1980年代以降追い求めてきた、市場メカニズムを金科玉条に掲げる考え方を見直さなくてはならない、ことに賛同する人が多くなっています。世の中に完全なシステムはありませんから、社会が良い意味で成長するためには、時に市場側に舵を切り、時に公側に舵を切ることが必要です。1980年代、世界は市場側に大きく舵を切りました。その結果世界経済は大きく成長しました。問題を生みながらも舵取りが成果を上げた一つの理由は、経済成長という価値観を官と民が共有できたからです。今問題なのは、市場側に向き過ぎた現況から公側に向けて舵を切るために、官と民が共有できる分かり易い価値観があるように思えないことです。舵取りが遅れ、市場側に人材、資金、などの資源が偏り過ぎてしまったことも問題になるでしょう。未来向けた舵取りは民側の自浄能力にかかっている面が相当程度あるように見えます。
日本には公を大切にする価値観が古くから浸透しています。コロナ禍でもそれが垣間見えました。アメリカが抱える問題や米中摩擦に翻弄されることなく、日本が主体的に価値観を発言すべき時代になっているのかもしれません。
■書籍『エナジー・トリプル・トランスフォーメーション』が、第40回エネルギーフォーラム賞「普及啓発賞」賞を受賞しました。

3つの変革という新しい視点が示されている点や、今後のエネルギーシステムをわかりやすく説明している点を評価頂きました。
※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。