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JRIレビュー Vol.11,No.83

「三本の矢」が拓く企業の気候変動リスクマネジメントー産学官の叡智が推進する物理的リスクと適応策評価

2020年10月27日 新美陽大


近年、国内外で気象災害による被害が拡大している。被害額などのデータにも、その傾向は如実に表れている。気象災害の拡大は、気候変動リスク顕在化の一端と見ることができる。

気候変動が経済社会のシステミックリスクになるとの懸念を踏まえ、金融界が中心となり、すべての企業は気候変動によるリスクと機会を財務的な観点から分析および公表すべきとした「TCFD提言」が策定され、多くの企業が取り組みを活発化させている。

近年の気象災害による物理的リスクは、企業収益にも実害を及ぼす形で顕在化している。

企業は、気候変動によるリスク把握と対策を万全とするため、物理的リスクの評価と適応策の検討を急ぐ必要がある。ところが、「情報」と「資金」の二つの障壁が、検討を阻んでいる。

これらの障壁を打破するカギは、物理的リスクの定量評価により、被る損失と適応策との「投資対効果」を明確化することである。ただし、既往研究は企業によって各々に異なる物理的リスクと適応策の検討には適さず、新たな評価手法を開発する必要がある。

企業の物理的リスク評価を、一般的なリスクマネジメント手法に基づき整理すると、財務モデルから「1回当たりの影響額」、気候モデルから「発生確率」の算定が必要となる。さらに、物理的リスクと適応策との定量評価手法を推進するには、「全般に亘る枠組み設計」が重要である。これらを「三本の矢」とする。
 ─  「影響額の算定方法」では、公開データや企業の経験値を基に、物理的リスクの影響フローを整理したうえで重要項目を選定し、併せて影響を定量化するための前提条件である「閾値」と「定数」を設定する。
 ─  「発生確率の算定方法」では、公開データを基に、企業の物理的リスク評価に十分な分解能を持ち、発生確率を分析可能な気候変動予測データセットを開発する。
 ─  「推進のための枠組み」では、上記「影響額の算定方法」および「発生確率の算定方法」の成果を採り入れた評価ツールを開発するとともに、適応策タクソノミーを策定してファイナンスを促進する。

「三本の矢」の開発には、産学官それぞれのセクターが、ニーズとシーズを持ち寄って連携することが必須である。

産学官の連携のために、まず「適応策ラウンドテーブル」の開催を提案する。また、各セクター間のコーディネーターを「気候予報士」が担うことで、情報の連携や制度の運用における連携が強まり、ONE TEAMで物理的リスクの評価および適応策の実施を進めることができるだろう。
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