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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.20,No.78

中国のキャッチアップと米中対立下での韓国企業の中国事業-サムスングループと現代自動車の動きを中心に

2020年08月18日 向山英彦


韓国では2000年代に輸出が成長をけん引し、年平均4.4%の成長を記録したが、その後中国の成長減速とキャッチアップにより輸出が鈍化し、成長率は2~3%台へ低下した。とくに最近は米中対立にコロナショックの影響が重なり、厳しい環境に置かれている。

20年1~3月期の成長率は民間消費と輸出(とくに観光サービス輸出)の急減により、前期比▲1.3%になり、4~6月期は輸出の落ち込みで同▲3.3%になった。足元では輸出の減速が続いているが、半導体は第4次産業革命の進展とデータセンターの増設などを背景に、比較的堅調に推移している。

半導体がけん引して年後半からの景気回復が期待されるが、米中対立の再燃が新たな不確実要因になった。アメリカ商務省は20年5月、ファーウェイに対する禁輸強化を発表し、同社が半導体の生産をTSMC(台湾)に委託させるルートを封じた。

韓国の4大財閥による中国事業は当初、家電や石油化学、自動車などの分野から始まったが、中国のキャッチアップに伴い事業構成が変化し、近年の主力事業は半導体やディスプレイ、EVバッテリーなどにシフトしている。

サムスン電子は14年、中国でNAND型フラッシュメモリの生産を開始し、20年に第2工場を稼働させた。中国企業のメモリ量産化計画はアメリカの対中制裁で進んでいないが、ファーウェイへの禁輸強化を受けて、中国政府が今後国産化を加速させることが予想されるため、その対応(含む人材引き抜き対策)が求められる。

中国企業のメモリ量産化が遅れるなかで、サムスン電子は生産能力を増強してメモリ分野で圧倒的優位な立場を維持しつつ、中長期的にはシステム半導体事業の強化を図っている。それを支えるエコシステムを構築出来るかが今後の課題となっている。

現代自動車は14年まで中国で販売台数を伸ばしたが、近年は外資系企業間の競争激化、地場企業の台頭、韓国のTHAAD配備に対する中国の事実上の経済報復などによって、深刻な不振に直面している。

最近の動きをみると、現代自動車は中国政府の政策に沿う形でエコカー重視のマーケティング戦略により中国事業の再生を図る一方、アメリカでの事業強化を進める戦略である。ただし、中国の新エネルギー自動車政策や今後の需要見通しなどに関しては不確実的要素が多く、再生は容易ではないと思われる。
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