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JRIレビュー Vol.9,No.81

マンションはこれからも維持できるのかー人口減少時代にふさわしい供給・維持・解体のルール構築を

2020年08月24日 立岡健二郎


わが国は今後さらなる人口減少に直面し、空き家問題が深刻化していく。それに伴い、行政が強制解体に踏み切るなどの事態が増えた場合、本来、住宅の所有者が負担すべき費用を社会全体で負担するケースが膨大になりかねない。こうしたリスクに対応するためには、住宅の維持・解体に関する明確なルールが必要である。本稿では、最も大きな問題を抱えるマンションに焦点を絞り、人口減少時代の維持・解体のルールの在り方を検討する。

マンションは、通常、すべての区分所有者をメンバーとする管理組合が総会での決議等に基づき、自主的な管理運営を行っている。各区分所有者は、毎月、管理運営のため、管理費のほか、劣化する建物・設備等の修繕に備えた積立金を負担している。

マンションに関する法制度は、1962年施行の区分所有法を基盤とする。同法は、区分所有建物の権利関係を明確化したほか、管理運営における自治を広く認めた。その後も、管理運営の適正化や建て替え等にかかる要件の緩和や手法の多様化などを目的に、同法の改正や追加立法等が進められてきた。

実際のマンション管理の状況をみると、修繕積立金の額が計画上の水準に比べ不足している組合が過半数を超えているなど、将来にわたって適切に維持管理できるのかが懸念されるマンションが全国に相当数存在する模様である。さらに、近年、マンションは“建物の高経年化”と“所有者の高齢化”に直面し、管理不全・廃墟化のリスクが増加している。実際、全国ではまだ稀なケースではあるものの、自治体がマンションの強制解体に踏み切らざるを得ない事例も生じている。

このため、国は、管理運営面での行政の役割強化や、敷地売却制度の要件緩和、敷地分割制度の創設などの法改正を実施した。自治体のなかにも、独自に届出制度や情報開示制度などに取り組んでいるところがある。加えて、実務面では、当事者の自助努力を支援・促進する取り組みとして、修繕資金等に関するシミュレーションツールの提供や修繕積立金が不足する管理組合向けに融資する際の信用補完策の検討のほか、マンションの市場価値の適正化に向けて、個々のマンションの情報開示や管理状況評価のための枠組みを検討する動きなどもみられる。

これらの取り組みの方向性は評価できるが、今後一段と加速する人口減少が住宅需要に及ぼすであろうインパクトを鑑みれば、当事者任せでは限界もあり、行政によるさらに踏み込んだ対応が必要である。全国のマンションの6~7割が立地する都市部でも急速な人口減少が進み、このままでは、行政が管理不全・廃墟化マンションの強制解体に踏み切らざるを得ない事態が多発しかねない。

現行のマンション関連の法制度で問題になるのは、区分所有権や私的自治等の“権利”が認められる一方で、本来はそれと表裏一体であるべき、維持管理・解体等に関する当事者の社会的な“責任や“義務”に関しほとんど規定されていない点である。今後、国や地方自治体は、①マンション関連法に、当事者による適正な管理等に関する義務や責任を明記する、②届出・情報開示制度を整備し、マンション管理の現状をしっかり把握する、③維持管理・解体の義務の具体的範囲や内容を国として明確に定める、④マンション再生に地方自治体がより積極的に関与する枠組みを整える、⑤管理・再生の在り方を現実に即して柔軟化・多様化することが求められる。

併せて、マンションを含む住宅の“供給”の在り方について議論を深めることも重要である。住宅ストックの総量に目安・目標を設けたり、開発規制を導入したりして、新規供給を抑制していくことも必要になろう。
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