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相次ぐ線状降水帯による水害発生、気候変動との関連性はあるか

2020年07月28日 新美陽大


 7月に入り、今年は記録的豪雨とそれに伴う河川の氾濫が、日本列島のあらゆる場所で発生している。4日には熊本県と鹿児島県、6日には福岡県・佐賀県・長崎県、そして8日には岐阜県と長野県を中心に、これまでに経験したことのない大雨に相当する「大雨特別警報」が発令された。九州北部や近畿・東海地方では、河川の氾濫や土砂崩れにより甚大な被害が生じている。特に、熊本県を流れる球磨川流域では大規模な氾濫が発生し、多くの方が亡くなられた。そうした方々への心からのお悔やみと、被害に遭われた方々へのお見舞いを申し上げたい。

 実は、日本列島の大部分が梅雨末期となる7月は、統計的にも豪雨が発生しやすい時期にあたる。2018年に西日本の広い範囲で発生した豪雨も、ちょうどこの時期だった。今回の豪雨と2018年西日本豪雨に共通するのは、「線状降水帯」と呼ばれる気象現象が原因となったことだ。まさに文字どおり、気象レーダー画面や雨量分布の解析図の上に、激しい降雨が数十キロメートルの幅を持った“線”として現れることから名付けられた現象だが、恐れるべきは、何時間ものあいだ、ほぼ同じ場所に停滞して、大量の降水をもたらすという特徴にある。

 線状降水帯の発生は、大規模災害の発生リスクに直結することが認識されているにもかかわらず、なぜ被害発生が免れられないのか。それは、現在の予測技術を持ってしても、前もって線状降水帯の発生地点や時間を予測することが不可能だからだ。線状降水帯の発生には、大小様々な規模の気象現象が複雑に関連していると見られており、いまだ発生に至るメカニズムは完全には明らかにされていない。そのため、「線状降水帯が発生しやすい地域」までは予測できるものの、災害につながるような降水が起こるか否かは、実際に線状降水帯の発生が確認できるまで分からず、結果として被害が発生してしまうのだ。

 さらに、これまで度々氾濫に見舞われている地域では、すでに治水対策が重点的に講じられているにもかかわらず、近年は対策の限界を超える現象が発生して、結果として被害発生につながる事例も多々見られる。「気候変動」は、このような「想定外」の事態を引き起こす要因の一つだろう。これまでの経験則からは「50年に1度」の発生頻度と見られていた現象が、気候変動の進行によって「30年に1度」あるいは「10年に1度」となり得る。「想定外」とは、このような傾向の変化を認知していないことに他ならないのではないだろうか。

 線状降水帯についても、発生のメカニズムや詳細な予測は今後の研究進展によって明らかになることが期待されるが、対策検討はそれを待たずに一刻も早く着手すべきだ。なぜなら、気候変動の進行によって大気はより暖かく、より多くの水蒸気を含むようになり、線状降水帯が形成されやすくなったり、あるいは一層強力な降水帯を形成したりする可能性が高いと考えられるからだ。河川の治水計画は言うまでも無く、また企業や自治体のBCP(事業継続計画)やタイムラインについても、「想定外」の事象が発生しないかを、いま一度確認すべきではないだろうか。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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