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【ヘルスケア】
ウィズコロナの時代がシニア世代にもたらすコミュニケーションスタイル変革

2020年07月14日 辻本まりえ


 新型コロナウイルスの流行に伴い、私たちは、これまでと異なる生活様式への移行を余儀なくされた。中でも一番大きいのはコミュニケーションスタイルの変化である。例えば、仕事の「場」が会社からリモートワーク・在宅ワークへと、学びの「場」が学校からオンライン授業へと移行した。それに伴って、これまで目的に応じて「場」に集まり対面で行っていたコミュニケーションが、サイバー空間上の非対面コミュニケーションへと変化している。新型コロナウイルスへの対応がある程度可能になったとしても、今後もこの生活様式が続くと考えられている。2カ月続くと習慣化するとも言われるように、今後は非対面コミュニケーションが主流となるのであろう。

 こういったコミュニケーションスタイルの移行は、シニア世代にも同様に起こる。シニア世代にとっては、この変化はチャンスと捉えるべきである。
 従来、シニア世代はデジタル化が遅れていると言われていたが、令和元年の総務省の調査では、60代は76.6%、70代でも51.0%がインターネットを利用しており、年代ごとの利用割合は年々伸びているという。実は、デジタルツールを活用した非対面コミュニケーションは、シニア世代との親和性が高い。加齢に伴う身体機能の低下により、徐々にこれまでと同様の活動ができなくなっていくシニア世代にとって、デジタルツールを活用した非対面コミュニケーションは、活動範囲の縮小を防ぎ、やりたいことを続けるための利点が大きい。

 例えば、「これまでは毎年、仲良しグループで旅行に行っていたが、その中の1人が病気のため参加出来なくなり、それ以降、グループで旅行に行くのをやめてしまった」といった話をよく聞く。語ってくださるシニアの方はとても懐かしそうに語るが、その表情には今はもう行けなくなってしまったという寂しさも浮かんでいる。
 こういったシニア同士のグループ旅行も、デジタルツールを活用した非対面コミュニケーションなら継続できる。VRやARを活用した体験型のサービスの提供も増えている。これらを利用することで、それぞれが自宅に居ながらオンラインでつながり、VRなどで同じ映像を同時に見て、一緒に旅行に行った気持ちで楽しむことができる。

 また、2018年度に、日本総合研究所がわこう市民ラボの協力を得て実施した調査では、70代以上の女性6人に3人1組となってもらい、別々の部屋をタブレットでつなぐ「オンライン女子会」を開催した。タブレットに別の組の顔が映し出された当初は戸惑いが見られたものの、次第に慣れていき、「最近はまっていること」や「髪の分け方」などのいわゆる「女子会の話題」で大いに盛り上がっていた。会の終了後、参加者に感想を聞くと「思ったよりも簡単で楽しかった」「これなら私もできそうだから今度孫とやってみたい」などと、オンラインコミュニケーションに対しても前向きな様子がうかがえた。

 アフターコロナ・ウィズコロナの時代といわれ、様々な変化が起こっている現在は、シニア世代にとっても新たな生活様式へと移行するチャンスである。特に、非対面コミュニケーションを活発化し、サイバー空間上での活動に慣れ親しむことは、シニア世代の身体機能や場所の制約を超えた活動を可能とし、社会やコミュニティへの参加の機会を増やすことにもつながる。
 加齢に伴う身体機能の低下は誰しもに起き得る。起こることが分かっているのであれば、予め対策をしておくことも可能である。人生100年時代といわれるなかで、「シニア世代」と呼ばれる期間は3分の1以上にわたる。その時間を自分らしく前向きに生きていくためには、非対面コミュニケーションスタイルへの移行は一つのカギとなるであろう。

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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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