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自然災害から人命と資産を守るための、時代に即した公共投資と適切な国土整備

2020年07月14日 井熊均


 九州地方を襲った豪雨では多くの方が亡くなられ、多くの方が家屋などに被害を受けました。亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げますと共に、被災された方々と地域に対して心よりお見舞いを申し上げます。一日も早い復旧が進むようお祈り申し上げます。

 国土の7割を占める山地は豊かな自然の源である一方、古来より災害の要因にもなってきました。近年の豪雨では河川の中下流部で甚大な被害が発生しています。洪水を防ぐためにはいくつかの方法がありますが、全流域にわたる流量調整において最も高い効果を発揮できる技術の一つがダムです。しかし、これまで様々な理由で多くのダムの建設が取り止めになってきました。ダムには、建設を受け入れる地域の負担が大きく便益は異なる地域が受ける、多くの人の移住を伴う、自然環境に与える影響が大きい、建設には巨額の費用と長い時間がかかる、などの問題がある上水需要が変化したことが理由と考えられます。これらについては、関係する方々の意見と専門的な検討を得て丁寧かつ適切に対処しなくてはなりません。

 一方、中止されたダムの中には、1990年代後半からの構造改革の流れの中で強まった大型土木工事に対する反対によって見送られたものもあると考えられます。当時、額においてはGDP対比で新興国・途上国並みの規模となり、効率性においては国際的に見てかなり割高となった公共投資を見直す必要があったことは確かです。私自身も公共投資の改善に向けた提言等を数多く行いました。この時代の議論の影響は大きく、当時指摘された問題が緩和された現在でも、公共投資に対するアレルギーは消えていません。そのせいか、今回のような災害が起こった時には、積極的な公共投資を訴える声より、ソフト面の対応を重視すべきとの声が多く聞かれるように思います。ソフト面の対応が重要なのはもちろんですが、多くの場合、それによって家屋やインフラなどの資産を守れる訳ではありません。

 IPCCが気候変動に警鐘をならす報告書を初めて出したのは30年も前のことです。以来、その原因である温室効果ガスの削減に関する議論は盛んに行われていますが、年々強まる自然の猛威から人命と資産をどう守るかについては議論が遅れています。常態化した脅威に備えるために、時代に即した公共投資の評価を行い、人命と資産を守るための適切な国土整備がなされることを期待します。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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