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どうなる容量市場~市場価格の行方と攻略のカギ~

2020年06月30日 早矢仕廉太郎


1.容量市場の取引の仕組み
 2020年7月、容量市場の応札が開始される。容量市場は、将来における日本全体の供給力(kW)を確保するために創設された市場であり、発電事業者が売り手、小売事業者が買い手となり、OCCTO(電力広域的運営推進機関)を介して取引が行われる。容量市場では、スポット市場(kWh)と異なり、小売事業者が入札を行うことはなく、代わりに政府があらかじめ定めた需要曲線を用いて約定価格が決定される。この需要曲線の形状が約定価格形成のカギを握っている。


2.急峻な需要曲線が起こす大きな価格変動リスク
 需要曲線の形状は経産省・OCCTO主催の審議会を通じて決定しており、かなり急峻な形状となっている。この形状が市場価格のボラティリティを大きくさせている。例えば、上限価格と目標調達量との間はわずか0.5%(94万kW)であり、つまり原発が1機停止するだけで、約定価格が1.5倍(+4,500円/kW)に上昇するのである。逆に、目標調達量よりも2.6%(約460万kW)落札量が増えるだけでkW価値は0になってしまう。容量市場は非常に価格ボラティリティが大きく、価格が乱高下する可能性があることを認識しなければならない。


3.同じkWでも異なる発電事業者の収益と小売事業者の費用負担
 発電・小売を一体に行う会社などの会社は発電事業者として得られる容量収益と小売事業者として支払う容量拠出金が相殺されるため、市場変動リスクの影響を受けないと考える事業者もいるかもしれない。しかし、実際には、同じkW容量であったとしても、収益と負担が一致しないことが十分に考えられる。例えば、発電事業者側では、電源種によって調整係数が設定されており、太陽光、風力等の変動性電源は容量価値が減じられるため、下図の通り、電源種によって容量収入の差は4倍ほどになる場合もある。また、小売事業者の負担は、日本全国の夏冬期のピーク需要(kW)に対する各事業者のピーク需要の割合で配分される。つまり、毎年同じ約定価格、ピーク需要だったとしても、他の小売事業者次第で負担する金額は変動するのである。したがって、下図からも分かるように、同じkW容量を発電―小売事業者間でやりとりしていたとしても、受け取る金額と支払う金額は必ずしも一致せず、どちらが得するかを予見することも難しいのである。


4.価格変動リスクをいかにヘッジするかが攻略のカギに
 説明してきたように、容量市場の価格は現時点で予見可能性が低く、毎年大きな価格変動が起こる可能性を秘めている。要因となっている需要曲線の形状について、政府は柔軟に見直しを図る姿勢を見せているが、少なくとも数年間はこの状況が続くだろう。したがって、制度設計が見直され価格が安定するまでは、価格変動リスクをいかにヘッジしていくかがより重要になる。例えば、リスクケースを含めた複数ケースでの容量市場価格の推定や、相対契約でのリスクヘッジなどリスクへの備えが容量市場攻略のカギになるのではないか。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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