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【スマートインフラ】
コロナ禍に見る自動車利用のanother way

2020年06月23日 程塚正史


 コロナ禍の影響で生活が変わるというのは論を待たない。都市部のオフィスワーカーを中心に在宅などリモートでの仕事時間が増えた。リモートワークの今後の定着に向けて様々な動きが進もうとしているが、突発的とも言えるここ数カ月の変化に個々人のレベルでは対応しきれない面もある。自宅には家族もいれば仕事以外の誘惑もあり、なかなか仕事に集中しにくい場合も多い。そこで、ある時間、自動車にこもって仕事をしている人もいると聞く。

 しばしの時間を過ごすために自動車を用いる動きはコロナ禍以前からあった。カーシェア最大手のパーク24によると、昼下がりの時間帯のオフィス街などでは、駐車場から一歩も出ない利用客もいるという。彼らは、シェア利用する車内で弁当を食べたり仮眠を取ったりしているのだという。コロナ禍の昨今に見られるように、車内でパソコン作業をしたり商談の電話をしたりというシーンもあったと思われる。

 一人や少人数で過ごすのに、自動車は便利な空間だ。エアコンもあればディスプレイやオーディオもある。コンパクトカーでも助手席ならばパソコンを膝上に開くこともできる。このように自動車で何かの作業をするという傾向は、今後ますます拡大していくだろう。なぜなら、一部の車種やブランドから徐々に始まっているコネクテッドサービスがさらに充実するからだ。

 トヨタ自動車などの世界大手や、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディなどのプレミアムブランドからすでに実際にリリースされているサービスを分析すると、コネクテッドサービスは大きく三つのカテゴリに分類できる。

 一つ目は安全系と呼べるもので、緊急時の警察・救急へのSOS通報や保険代行などだ。自動車に不可避的に生じる事故や故障の際の不利益を、可能な限り低減させるものといえる。二つ目は移動支援系と呼べるもので、ナビゲーションの高度化や、目的地検索を支援するものだ。プレミアムブランドではコンシェルジュが付いて、いわゆる高級レストランの案内などに特徴を付けている。これは、自動車の中核的価値にあたる移動の質を高めるものといえる。

 三つめは快適系と呼べるもので、TwitterなどのSNSの利用や、ニュースや天気予報の情報探索などがある。この領域のサービスは、自動車に不可欠な安全系や移動の価値を高める移動支援系と異なり、自動車に必然的に付随するものではない。しかし、完成車メーカーや車載OS関連の動きを見ると、この領域の発展余地が大きいように思われる。

 車載OSとしては、グーグルやアップルが情報系ECUに特化したOSの開発を進め、すでにメルセデス・ベンツをはじめ一部のブランドに搭載されている。完成車メーカー側もIT企業に依存しないOSを構築すべく、トヨタ自動車を中心とするアライアンス方式で開発を進めている。次世代のサービスコンセプトも各ブランドが出しつつあり、アウディがディズニーと組んでVRによる映像を見せたり、日産が助手席に三次元アバターを出現させたりという動きが見られる。

 このような快適系サービスの進化が進めば、自動車は様々な情報やアプリケーションにアクセスできる場になるだろう。日本総研では、その進化の先にある自動車という製品やサービスのあるべき姿について検討を行っている。コロナ禍の影響で、自動車内でパソコン作業することを強いられた方にとっては、いわば緊急避難だったかもしれないが、実は今後の変化の先駆けを体現しているスタイルかもしれない。

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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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