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「自然を活用した東京都版保育モデル」に係る事業の実施報告

2020年06月03日 福田隆士、森下宏樹、芦沢未菜、田上はるか


※本概要報告は、令和元年度の東京都「自然を活用した東京都版保育モデルの検討に係る企画・運営等業務委託」の一環として実施した内容を取りまとめたものです。

1.モデル事業の背景・目的
 近年、保育の質の確保・向上に係る取り組みの一つとして近年自然環境を活用した保育への関心がますます高まっている。自然の中での体験や自然環境を活用した教育は、子どもの主体性や想像力、思考力、コミュニケーション能力などに代表される非認知能力を養うために効果的とされている。
 東京都では、待機児童の解消に向け、都独自の整備費補助や都有地の活用等により区市町村を支援し、保育の受け皿整備に向けた各種取り組みを展開しており、これらの関心の高まりもあって、東京ならではの自然環境を生かし、自然を活用した独自の保育モデルを検討、整備し、さらなる保育の質の確保・向上を目指している。
 本事業は東京都内の自然環境を活用して保育を行う、「自然を活用した東京都版保育モデル」を検討・策定することを目的に実施した。

2.事業の進め方(概要)
 本事業は以下の進め方で各種検討・モデル事業展開を行った。


3.モデル事業実施概要
 事業実施にあたっては、東京都内からモデル事業への参加施設の公募を行い、以下の3施設をモデル事業実施施設として選定した。

・荒川区「南千住七丁目保育園」
・清瀬市「せせらぎ保育園」
・練馬区「まちの保育園小竹向原」

 モデル事業は令和元年11月から令和2年1月にかけての3カ月程度とし、事務局である日本総研から、自然を活用した保育の実践経験が豊富な事業アドバイザーを各園に派遣、活動同行等を行う形で必要な支援を行った。なお、モデル事業の実施にあたっては、事前に実施した有識者ヒアリング等で得られた示唆も踏まえ、以下の基本方針を設定し、取り組みを進めた。

・園の日常的・継続的な活動として実施する
・子どもの自主性・自発性を促すために、近隣の自然環境下で自由に遊ぶ活動を中心とする
・各保育所が実施している取り組みの一環としての自然活用とする
・保育者への事前の情報提供、研修を実施し、実践のポイントの共有を図る
・近隣環境下での活動効果を高める狙いで、遠隔地での活動を行う

4.モデル事業実施施設における活動
 モデル事業実施施設では、基本的に以下の流れで活動を行った。

①事前打ち合わせ
②保育者を対象とする導入研修
③近隣の公園等における活動(初回)
④園から離れた広大な公園等を活用した遠隔地での活動
⑤近隣の公園等における活動(最終)
⑥実践を踏まえた保育者との意見交換

 施設ごとに周囲の自然環境や、自然を活用した保育に関するこれまでの取り組み状況、懸念点等が異なることから、各施設にて丁寧な事前打ち合わせを実施し、取り組み方針のすり合わせを行った。モデル事業実施にあたっては各施設の特徴を考慮し、導入研修の内容や、遠隔地での活動における行き先等を個別に調整した。

5.モデル事業実施の成果
 本モデル事業は短期間かつ一定の制約のある中での活動ではあったが、各施設でのモデル事業を総括すると以下のような成果が得られたと考えている。

・保育者の意識の変容、それに伴う子どもとの関わり方の変化が見られた
 保育者の、子どもへの接し方や自然を活用する際のリスク管理の考え方等について、意識が変容する兆しが見られた。保育者との意見交換においても、「活動初期と比較して、より見守りに徹することで子ども同士での遊びを促す関わり方ができるようになった」など、保育者自身も意識の変容を感じていることが確認できた。
・子どもたちの遊び方に変化の兆しが見られた
 保育者側の接し方が、より子どもたちの主体性を引き出すものに変わりつつあることを受けて、子どもたちの遊び方にも少しずつ変化が生じた。例えば以前よりも没頭して遊び込む様子や、独自の遊び方を生み出す様子などが見られた。
・(一部ではあるが)保護者・家庭での取り組みのきっかけとなった
 各施設で実施した保護者アンケートの結果等から、今回のモデル事業を通じて、家庭での子どもの遊びに関する希望や、発言内容に変化が見られたという意見があった。子どもの希望を踏まえて、家庭でも自然を意識した遊びを実施したという保護者もおり、一部ではあるものの、家庭での活動を促進するきっかけにもなった。

 本事業実施に係る詳細、活動報告会の開催状況等については活動報告書および、リーフレットに取りまとめています。活動報告書およびリーフレットは、東京都福祉保健局のウェブサイトを参照ください。

東京都ウェブサイトへのリンク

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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