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日本総研ニュースレター 2019年11月号

地方創生SDGs金融とインパクト評価の導入

2019年11月01日 渡辺珠子


検討が進む「地方創生SDGs金融」
 地方創生にSDGsと金融の仕組みを組み込む検討が進んでいる。高齢化や過疎化に伴いますます縮小傾向にある地域経済の活性化には、地域の社会や環境に望ましい影響をもたらし得る事業、すなわちSDGsの観点から高く評価できる事業の維持・成長が必須であるという考えが強まってきたためである。この「地方創生SDGs金融」は、内閣府で検討が進められているが、注目すべきは、支援した事業が「SDGsの達成にどの程度貢献しているか」という、事業のインパクト評価も併せて検討されていることである。

インパクト評価とは
 援助事業の評価をルーツとするインパクト評価は、近年、社会や環境に良い影響をもたらすことが明確に期待される事業に行われる「インパクト投資」に対する評価手法として認知が高まっている。インパクト評価では、投資した資金が社会や環境にもたらす効果を計測・調査することで、当該事業の非財務的価値の評価を行う。地方創生SDGs金融においてインパクト評価を行う主な目的は、支援した事業をSDGsの観点から評価し、地域社会に資金活用の説明責任を果たすためである。
 現在、日本では金融機関によるインパクト投資が徐々に拡大しているものの、具体的なインパクト評価レポートはまだなく、公表されているインパクト評価レポートのうち、企業が関与するものの多くはCSR活動に関するものである。例えばゴールドマン・サックス(以下「GS」)はCSR活動として同社社員を中小企業にインターン派遣する事業を実施しており、第三者によるインパクト評価を実施している。評価内容には、派遣された社員が中小企業にもたらした効果だけでなく、地域社会経済の活性化や地域の若者の自己成長への寄与など、各地域への「社会・環境への良い影響」が含まれる。具体的には地方から都会への若手人材流出防止や、まちづくりへの地域住民との協業への協業などを効果として取り上げ、調査を踏まえた評価を実施している。

指標の設定と費用が課題
 インパクト評価の実際の運用には大きな課題が二つある。一つはインパクト評価指標の適切な設定である。ここでいう「適切」とは、指標が金融機関や企業が取得可能であり、かつ成果を合理的に判断できることを指す。例えば、環境面では、CO2排出量やごみ排出量など一般的に取得可能な評価指標が多いが、社会面には地域社会の安心・安全や子育てのしやすさといった、客観的かつ明確な測定が難しい指標が含まれることが多い。若手人材の流出防止効果を謳う左記のGSの例では、専門機関が評価のために様々なステークホルダーへのヒアリング調査を実施している。しかしインパクト評価に慣れていない金融機関や企業が単独で適切な評価指標を設定することは容易ではない。
 もう一つの課題は、インパクト評価にかかる費用である。財務諸表のデータとは異なり、インパクト評価の指標は事業活動を通じて簡易に取得できるものばかりではない。仮に事業活動の目的が若手人材の流出防止であるとすると、インパクト評価のためには、地域の若者が都会に出る選択をしなかった理由を把握し、事業活動を実施しなかった場合の若手人材の流出状況と比較する調査が理論上必要である。実施した場合の手間と費用は決して少なくないだろう。

インパクト評価の導入に備えよ
 課題はあるものの、地方創生SDGs金融によって、効果の高い事業への資金注入を促進したいと国が考える以上、インパクト評価は必須となる。現在、内閣府では地方創生SDGs金融のためのインパクト評価指標セットの設定を試みているが、金融機関や企業が納得できる合理的かつコスト面も含めて取得が可能な指標を設定することは非常に難しい。
 それでもインパクト評価の実施を避けられない可能性は十分ある。現在、非営利セクターでインパクト評価への理解が進んでいることを考えると、今からNPO法人等と協業し、小規模でもインパクト評価を実施して慣れておくなどの取り組みを自主的に進めておくことも視野に入れるべきであろう。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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