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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.20,No.77

ASEAN諸国におけるフィンテック拡大の現状および金融システムと経済への影響

2020年05月19日 清水聡


アジア地域において、フィンテックが決済サービスを中心に拡大している。フィンテックの拡大による重要な効果は、個人や中小企業に対する金融サービスの拡大(金融包摂)が期待されることである。一方、多数のフィンテック企業の参入や巨大テクノロジー企業(ビッグテック)の支配力の高まりなどにより金融システムが変化する可能性があるほか、データの安全性、マネーロンダリング、テロリストによる資金調達などの問題が生じることが懸念される。プラスの効果を最大化するとともに多様なリスクを抑制するため、金融当局には様々な努力が求められる。

ASEAN地域のフィンテック企業に対する投資が、シンガポール・インドネシア・ベトナムなどを中心に拡大している。フィンテック企業も急増しているが、域内の金融センターであるシンガポールにおいてフィンテック振興のために多様な政策が実施されていることなどから、フィンテック企業はシンガポールに集中する傾向がみられる。フィンテック企業の拡大には課題や障害も多いが、基本的には以後も拡大が続くことが予想される。各国の金融当局も、業務分野別の規制の整備や規制サンドボックスの設立など、多様な政策によりフィンテックの促進を図っている。

フィンテック専門の企業に加え、フィンテック拡大の重要な担い手となっているのがビッグテックである。eコマース等の本業により膨大なデータを蓄積し、これを活用して様々な金融サービスに乗り出している。ビッグテックはすでに独占的な力を持っており、競争促進に関する法規制の見直し、多様なデータのビッグテックによる独占への対処など、多くの議論を招いている。こうした状況下、銀行は、自らの強みを生かしつつ、新たな競争環境のなかで総合的なデジタル化対応に取り組んでいくことが求められる。

フィンテックの拡大は、金融システムや実体経済に多様なプラス効果をもたらすことが期待される。第1に、デジタル決済の普及により、利便性・効率性が高まり生産性の向上や経済成長率の上昇につながること、金融包摂が促進されることなどが期待出来る。第2に、フィンテックの拡大とともにeコマースが急成長しており、参加企業の生産性の向上や包摂的成長の促進につながっている。第3に、モバイル・バンキングやモバイル・マネーが個人の金融包摂を促進している。金融包摂の改善は、経済成長率の向上、貧困削減、所得格差の縮小などにつながる。第4に、多様なデータを活用して行われるフィンテック・クレジットの拡大が進行しており、これによる中小企業の資金調達の増加が経済成長に大きな効果をもたらすことが期待される。

このように、フィンテックの拡大は経済に対して様々なプラス効果をもたらす一方、金融システムが大きく変化して金融安定が脅かされる懸念もある。フィンテックの今後の動向に、引き続き注目していくことが重要である。
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