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【スマートインフラ】
拡大する中国中古車市場と日本に向けられる期待

2020年04月28日 七澤安希子


 中国の中古車市場は2015年以降から拡大を続け、年間1400万台(2018年時点)という販売規模である。新車販売台数が伸び悩む中、中古車販売台数の成長率は3年前と比べて1.5倍であり、急拡大している市場といえるだろう。日本では、中古車市場が新車市場の1.5倍の規模になっている。これと比べると、中古車を選択する消費者は中国ではいまだ少ないものの、新車を保有することがステータスという価値観を特に持たない若者が増えており、2020年度には新車市場と同規模まで成長するという見方も出ている。中古車販売を手掛けるスタートアップ企業が簡易に中古車の状態を可視化する仕組みを提供し始めた等の動きもあり、個人間の売買が徐々に進みつつある。

 中国の中央政府は、新車の値崩れを防ぐため、そして中古車ビジネスを産業として発展させるために、使用から廃棄までの自動車の状態を追跡できるデータプラットフォームを構築し、データを活用した産業創出を進める方針を出している。中国のシンクタンクや地方政府がこぞって、自動車(新エネルギー車含む)のリペア技術、適切な残存価値の診断・評価モデル、さらには中古車業界のあるべきビジネスモデルについて本格的に検討し始め、当社にも相談がくるようになったのは最近の大きな変化である。

 ある地方政府は、このような動きを既存のリサイクル産業団地の発展に生かそうと、具体的に動き始めている。これまではリサイクル企業による資源化拠点でしかなかった既存のリサイクル産業団地に、中古車市場と連動させたリサイクルサプライチェーンを構築したいというのがその動機である。中古車の残存価値の評価基準やリスク分担の設定方法に関する日本の経験を学ぶために日系オートリース会社や保険会社との議論を始めたり、残存価値の精緻な把握を可能とする日本の診断技術や、残存価値を向上させる日本のリペア技術を探索したりし始めているという。将来は、日本企業との連携を通じて構築したモデルを、中国国内のみならず一帯一路周辺国に展開し、販売網を海外の中古車市場まで拡大する計画も並行して検討している。海外の中古車市場においては、高品質というイメージから日本ブランドの訴求力が高く、日本企業との連携がビジネスチャンスにつながると期待しているのである。既に、海外の販売業者の開拓や海外の中古車市場ニーズの把握、保税区の環境整備を進めており、中国の野心とスピード感には驚かされる。

 目覚ましい成長を続ける中国の中古車市場において、日本の技術や経験が価値の源泉になると考えられている今、中古車に関わる日本企業は中国への参入可能性を検討してはどうだろうか。中国ビジネスには、さらなる海外展開へのステップになる可能性が秘められているに違いない。

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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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