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JRIレビュー Vol.6,No.78

人材活用の新潮流・人材シェアリングー人口減少下の効率的な人材活用法に関する考察

2020年04月28日 星貴子


高度人材不足が地域経済に深刻なダメージを及ぼすことが懸念されるなか、人材シェアリングは人口減少に向かうわが国にとって有効な人材活用法になることが期待される。これは、従来の取引や連携などに基づいて実施される出向や派遣と異なり、組織、業種、地域といった既存の枠組みを越えて複数の事業体が、IT技術者、企業経営者、マネジメント経験者といった高度人材を共有することである。

人材シェアリングを通して、事業体は、効率的な人材活用、従業員の成長、イノベーションの創出、ネットワークの拡大といったメリットが期待できる。実際に、こうしたメリットを実感する事業体が出てきている。さらに、人材シェアリングは、事業体にとどまらず、地域の産業基盤の強化や地域経済の再生・活性化、技術開発や新産業創出の促進など、わが国経済へのメリットも期待できる。

人材シェアリングを取り巻く状況をみると、副業・兼業を希望する労働者が増加するとともに、そうした働き方を受け入れる事業体も増加し、しかもIT関連企業から地方自治体まで業種が多様化している。また、官民連携の下、高度人材と彼らを必要とする事業体を仲介する体制が全国規模で拡充され始めた。人材シェアリングの基盤が構築されつつあるといえよう。

一方で、人材シェアリングに対するリスクも残っている。事業体では、労務管理の煩雑化や事務負担の増加、情報漏えいや知的財産の流出を懸念している。こうしたリスクを低減するため、シェアリング人材を共有する事業体の業種、そこでの就労時間や勤務形態などを制限する社内規定を設けている例が多いが、その効果は限定的である。そのうえ、こうした制限がシェアリング人材の抱える過重労働、社会保険の保証・補償の縮小といったリスクを招来した面も否めない。

今後、人材シェアリングの普及が予想されるなか、残存するリスクの低減が不可欠となる。当面は現行法制下、各事業体のなかで規定の見直しで対処せざるを得ないが、多様な働き方を保証するため、労働関連法制の抜本的な見直しが必要であろう。
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