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認知症高齢者の行方不明時における広域での支援体制構築に関する調査研究事業

2020年04月10日 紀伊信之石田遥太郎、田上はるか、濱田 樹


*本事業は、令和元年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の目的
 高齢化の進展により認知症の方の数は年々増加しており、2025年には認知症の方の数が約700万人前後になると推計されている。これに伴って、認知症による行方不明者も増加しており、警察への届出があったものだけで平成29年には年間1万5,000人を超えている。届出が出ていない短時間のケースを含めると、実際にはより多くの方が行方不明になっている可能性が高い。
 地域の中で認知症になってもごく当たり前に暮らし続けられる社会に向けて、家族の不安解消や本人の安全確保の観点から、万一行方不明になった際に、居場所をすぐに探すことができる捜索サービスを活用することが考えられる。
 これらのサービスを市民に紹介する自治体にとっては、それぞれのサービスの特徴を理解した上で、自らの地域における課題にフィットしたシステムを選ぶことが求められる。
 さらに、こうした見守り・捜索のサービスを活用する際には、行政区をまたいで行方不明となる場合もあることから、市町村や都道府県をまたいだ広域での見守りの体制をいかに構築していくか、という点も検討が必要である。
以上の認識から、本調査研究では以下の二点を目的とした。
1)様々な見守り・捜索サービスの特徴を調査、整理し、一覧の形で情報提供することにより、自治体担当者や地域住民が各地域の課題に応じて、見守り・捜索システムを選びやすい環境を整備する。
2)複数の事業者間での連携のあり方について検討し、広域での見守り・捜索の体制についての課題と対応策について整理する。

2.事業概要
(1)見守り・捜索システムの特徴調査(事業者へのアンケート調査)
 過去の調査研究や公開情報等を元に、認知症高齢者等の行方不明時に活用できる見守り・捜索サービスについて、その概略を調査・整理し、自治体向けの一覧冊子に取りまとめた。
(2)広域的な見守りに関する連携・ネットワークの構築等の事例調査
 過去の調査研究や公開情報の他、(1)で実施した事業者へのアンケート調査の結果を踏まえ、各市町村における、認知症高齢者の行方不明時における捜索支援の取り組み状況および、市町村をまたいで行方不明になった場合の捜索の現状や課題について、複数の市町村にヒアリングを実施した。
 また、市町村をまたいで行方不明が発生した場合、都道府県を介した自治体間の情報共有の仕組みが構築されていることに鑑み、各都道府県における行方不明者の情報共有のあり方について複数の都道府県にヒアリングを実施した。
(3)広域的な見守り体制構築に向けた事業者間連携の検討
 (1)で整理したサービス・システム間の補完・競合の関係を意識しつつ、隣接する自治体間での連携を含めた広域的な見守り体制構築に向けて、課題の整理や今後のあり方を検討するために、事業者間協議等を開催した。

3.主な事業成果

3.1.認知症高齢者の行方不明時等の見守り・探索サービスの状況
 民間事業者の提供する認知症高齢者等の捜索・見守りサービスについて調査を行った結果、各サービスの持つ機能を、行方不明者の位置や移動履歴を把握する「位置把握機能」、身元不明の方の身元や緊急連絡先等を把握する「身元確認機能」、地域の協力機関や協力者に捜索協力を依頼する「捜索依頼機能」の3つに整理した。

■位置把握機能
 位置把握機能を持つサービスは、①利用者のもつ端末が発する電波を受信することで位置把握を行うタイプと、②GPSによって位置把握を行うタイプの2つに大別できる。
①利用者が持つ端末が発する電波を受信することで位置把握を行うタイプのサービスは、利用者の携帯する小型端末(発信機)が専用アプリをインストールしたスマートフォンや固定受信機とすれ違うと、Bluetooth通信等により受信機の位置情報がサーバーへ送信され、位置や移動経路等を確認できる。
②GPSによって位置把握を行うタイプのサービスは、携帯型のGPS端末により、現在位置や移動経路等を確認できる。専用アプリや、固定受信機等を必要とせず、利用者が携帯する端末で現在位置や移動経路等を把握できる。

■身元確認機能
 身元確認機能を持つサービスは、認知症の方が緊急連絡先(家族・自治体)や個人ID等の情報を読み取ることのできるキーホルダーやシールを身に着けることで、警察や一般の方が身元不明者として保護した際に、スムーズに身元を特定することができる。

■捜索依頼機能
 捜索依頼機能を持つサービスは、①アプリ等を通じて捜索依頼を行うタイプと、②メールやFAXの一斉配信により捜索依頼を行うタイプの2つに大別できる。
①アプリ等を通じて捜索依頼を行うタイプのサービスは、一般の協力者に、広く捜索に協力してもらえる点に特徴がある。サービスによっては、捜索中や発見後、アプリを通じて直接家族等と連絡をとり、位置情報の共有や、早期の引き渡しを行うことができる。また、利用者が専用のキーホルダー等を携帯することにより、身元確認がスムーズに行えるものもある。
②メールやFAXの一斉配信により捜索依頼を行うタイプのサービスは、SOSネットワークにおける連携機関や、地域の協力者等へ行方不明者の情報共有を行う際の行政の事務負担軽減を意図したものである。ただし、地域の協力者等が行方不明者を発見した場合、家族等へ直接連絡することはできず、警察等を通じて情報提供を行うことになる点に留意が必要である。

3.2.広域的な見守り体制構築における考察

■広域的な見守りに関する連携・ネットワークの構築等の事例調査
 市町村の境に住まいのある方や、公共交通機関が発達している都心部等においては、居住地のある市町村を超えて行方不明となってしまう事例もあり、市町村をまたいでも捜索できる体制を整えることが課題である。
 ヒアリング調査の結果、広域での捜索に強みのある「位置把握機能」を持つサービスと、地域と連携した見守り体制づくりに強みのある「捜索依頼機能」を持つサービスを並行して導入することで、効果的な捜索支援体制の構築に取り組んでいる事例があった。これは、単一のサービスでの限界を踏まえ、異なるタイプのサービスを組み合わせ、重層的に支援することで、より早期での発見・保護や、より広域での見守りにつなげていくことを目指した事例と言える。
 また、自治体によっては、広域での探索を強固にするため、民間サービス活用と並行して、SOSネットワークを活用して、都道府県や市町村間の行方不明者の情報共有が行われている例もあった。
 一方、都道府県や市町村間の行方不明者の情報共有においては、以下のような情報共有体制、および運用面での課題が存在する。
・都道府県内の市町村に一斉に捜索依頼の周知を行うことはできるが、市町村内での捜索方法は一任されており、捜索方法が市町村によって異なる。
・個人情報の取り扱いに際して、丁寧な確認が必要である上、捜索依頼はメールで実施されている等、自治体等の事務的負担が大きい。
・他都道府県や市町村への連絡について、決められた時刻でのメール、FAX等の情報共有となっており、行方不明の申し出からのタイムラグが生じることがある。

■広域的な見守り体制構築に向けた事業者間連携の検討
 広域での探索に多くの受信機や協力者を必要とするサービスについては、類似のサービスを提供している企業が連携することにより、受信機や協力者の数を増やし、広域での探索を可能にすることが考えられる。そのため、本事業では高齢者の持つ端末が発する電波を受信して位置把握を行うサービスと、アプリ等を通じて捜索依頼を行うサービスのそれぞれについて、事業者間連携の可能性について検討を行った。
 その結果、いずれのサービスについても、技術的な情報連携は可能である一方で、連携の音頭をとる担い手や、連携にかかるコスト、個人情報保護の取り扱い等が課題となることが明らかになった。
従って、各事業者が労力とコストをかけて事業者間連携を行うことは一定のハードルがあり、各自治体が、広域での見守りに強みを持つサービスと身元確認サービスを組み合わせて導入することで、機能を補い合うことが有効であることが示唆された。

※詳細につきましては、下記の報告書ならびに「認知症高齢者の行方不明時等の見守り・捜索システムについて」をご参照ください。
【報告書】
【認知症高齢者の行方不明時等の見守り・捜索システムについて】
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