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介護事業所の認証評価制度の普及に関する調査研究事業

2020年04月10日 福田隆士山崎香織、田上はるか


*本事業は、令和元年度老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の背景・目的
 地域包括ケアシステムの構築の推進における資源面での課題としては、財政的な制約に加え、人的資源の制約が大きくなっている。厚生労働省の公表資料において、2025年には約55万人の介護人材の需給ギャップが生じるとの推計が示されており、このギャップを埋めるべく各種検討・取り組みが進められているところである。
 基金を活用したメニューの一つに、基盤整備を目的とした「人材育成等に取り組む事業所の認証評価制度実施事業」が位置付けられている。先駆的に取り組みを進めている京都府などでは、認証された事業所とそうではない事業所の従事者の離職率等には一定の差が生じていることが示されており、有効な施策の一つと判断できる。
 介護事業所の認証評価制度は、実際に離職防止や入職促進に一定の効果があることが示唆されており、事業所の主体的な取り組みを支援するということからも重要な位置付けにある。介護人材の確保・定着の推進は最終的には事業所による部分も大きく、事業所の取り組みをいかに促進していくかということが非常に重要なポイントになる。これらを鑑みると、事業所の認証評価制度は介護人材確保の重要な施策の一つであると判断でき、より広範な地域で展開されることが期待される。
 令和元年度現在において、介護事業所の認証評価制度を開始している都道府県は約半数ほどであり、検討中、準備中という都道府県も一定数見られる。平成31年3月に「人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度の運営にかかるガイドライン」が策定・公表されたことも踏まえ、今後はより多くの都道府県での導入が進むとともに、より運用の効果を高めるべく、普及促進を図ることが重要となる。
 本事業では、上記の背景を踏まえ、①認証評価制度の都道府県への導入が一層促進されること、②運用における効果の向上が図られることを狙いとして、調査・検討を進めることとした。
 各種調査・検討を踏まえ、より効果的な運用のあり方の方向性の整理を実施し、報告書として取りまとめを行った。

2.調査方法・進め方
 本事業は、以下の実施内容、進め方で検討を行った。

(1)検討委員会での検討
 本事業を進めるにあたり、各種検討等を円滑かつ効果的なものとするために、認証評価制度に関する有識者等で構成した検討委員会を設置し、各種検討を実施した。

(2)認証評価制度導入済み都道府県に対するヒアリング調査の実施
 認証評価制度導入済みの都道府県に対し、事業者の参加促進や、求職者の認知度向上に向けた取り組みに関するヒアリングを行った。
 調査結果をもとに、導入済み都道府県における認証評価制度の活用促進に向けた課題を抽出し、以降の調査を進めるにあたってのポイントを整理した。ヒアリング調査は5都道府県を対象に実施した。

(3)先行調査研究の整理
 求職者が就職時に重視するポイントや、活用する媒体等に関する過去調査を整理した。
 その結果をもとに、求職者の認知度向上における重要なステークホルダーを抽出し、アンケート調査対象の検討を行った。

(4)養成施設および一般高校教員に対するアンケート調査の実施
 認証評価制度の現場における認知度・活用方法を把握するとともに、今後さらに本制度の活用促進を図るためのポイントを整理することを目的に、介護福祉士養成施設および一般高校の教員に対するWebアンケート調査を実施した。調査票は、ヒアリング、先行調査研究等をもとに設計を行った。

(5)認証評価制度の活用促進に向けた施策の検討
 ヒアリング調査、アンケート調査の結果等を踏まえ、認証評価制度の現状の認知度・活用方法、今後さらに活用を促進していくにあたってのポイント等について、検討委員会での議論も踏まえて検討を行った。

(6)報告書の取りまとめ
 各種調査、検討の結果について、報告書として取りまとめた。また、認証評価制度のガイドラインの改定を行った。

3.アンケート調査結果のポイント
<養成施設教員向け調査結果>
・養成施設教員のさらなる認知度向上が期待される
・養成施設教員の重視点、不足していると考える情報を考慮した情報発信が重要
・口コミなども考慮した情報提供・発信チャネルの検討も必要

<一般高校教員向け調査結果>
・まずは認知度の向上が重要
・養成施設教員との相違点を考慮することも必要
・複数の情報発信チャネル・それぞれの特性を考慮した発信の実施が期待される

4.今後に向けた検討課題・提言
①各地域の実情を踏まえた重点対象、制度の認知状況を踏まえた普及促進策検討
 介護事業所の認証評価制度のさらなる普及促進に向けては、認知のさらなる向上、そのための各種取り組み促進、加えて認知している人が探索、利用し、情報共有できる仕組みが重要である。
 各地域の養成施設の有無・定員充足状況、介護人材の過不足感も考慮して重点的に認知度向上等を図る対象と定めることも必要である。特に養成施設がないような場合は、一般高校等へのアプローチがより重要となるものであり、生徒との接点である教員の認知度を高めることが期待される。
 また、認証評価制度の実施からある程度期間が経っている場合、認知度も一定水準にあることが想定される。その場合においては、認知度を高める取り組みだけではなく、認知している人がより適切に情報を収集し、活用、さらには情報共有につながる枠組みを作っていくことがより重要となる。
 まずは、地域内の資源の状況、認証評価制度の認知状況等を考慮して、今後の取り組みに係る全体の方針設計を行うことが重要と考える。
 なお、認知状況を把握する際はアンケート調査が有用であることは確かであるが、費用面、人的資源の面から実施できないことも想定される。その際は、養成施設や高校へのヒアリングや意見交換の実施、また、事業者や市町村から情報を集めることも一案と考えられる。

②地域実態を踏まえた認知度向上の取り組みの推進
 上述のとおり、認証評価制度の普及のためには、事業者や求職者だけではなく、関係する養成施設教員、一般高校教員向けの認知度向上も重要となる。また、地域の状況によって、一般高校教員に対する認知度向上の重要性は異なるものである。
 地域内での養成施設の状況なども考慮し、養成施設教員、一般高校教員向けの認知度向上の施策を検討、推進することが必要となる。
 また、養成施設と一般高校の教員では、期待する情報、活用する情報源等に相違があることに留意し、それぞれの取り組みを考えることが必要である。
 基本的なコンテンツは同様となるが、見せ方、特にポイントを置くべき点などは異なるものという前提で訴求のあり方、方法を整理すべきである。

③活用しやすいツール・媒体の整理に加えた情報共有の仕組みの検討
 認証評価制度の認知度を高め、学生・生徒への就業先紹介においてこの情報を参考にしてもらうためには、教員にとって活用しやすいツール・媒体を整備していくことも重要である。
 また、教員においても情報収集に際しては口コミの比重がある程度高いことも留意する必要がある。既存ネットワークの口コミだけではなく、積極的に口コミを発生させるための情報共有、交流の場を設けることも一つの方策である。養成施設や一般高校の教員と認証事業所の従事者の接点を構築するうえでは、説明会等の場の活用、学校訪問等が想定され、加えて、Web上での交流の場なども想定できる。  
 若年層への対応の観点からはSNS等の効果的活用も期待される部分である。SNS活用なども考える際は、対象となるユーザー層の考え方を重視する必要があり、検討段階から若年層と連携していくことも検討すべきであろう。

※本事業の詳細につきましては、下記の報告書等をご参照ください。
【報告書】
【ガイドライン】

本件に関するお問い合わせ
リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 福田隆士
TEL: 03-6833-5201   E-mail: fukuda.t@jri.co.jp
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